のれんの計上額が巨額になると、何かと話題になりがちである。積極的にM&Aを行っているため注目を浴びる場合もあるが、のれんの減損が発生するのではないかと市場から嫌気される場合もある。今回は、巨額ののれんを計上している会社の特徴について考えてみたい。

多額の「のれん」を計上している企業の特徴は

M&Aを積極的に行っている企業は自ずと多額ののれんを計上する傾向にある。ただし、のれんが計上されるのは、対象企業の純資産額より取得価額が大きい場合だ。

単に頻繁にM&Aを行っている企業というより、対象企業の成長性や自社とのシナジー効果を見込んで、純資産より高値で買収を行う企業ほど、のれんの計上も大きくなるといえる。

前回の記事(「大論争!「のれん」は償却すべきか?」)でも触れたように、IFRSや米国会計基準ではのれんの償却を行わない。そのため、IFRSなどを採用する企業が頻繁にM&Aを行えば、非償却ののれんが積み上がっていき、結果としてのれんの計上額が多額になる場合が多い。

のれん」の計上額が多い企業ランキング

日本経済新聞社の集計によると、上場企業約3,600社の2016年末時点におけるのれん計上額は29兆2,000億円にのぼるという。この額は、上場企業全体の利益額に迫る水準であるという分析もなされている。

我が国でのれんの計上額が多い企業としては、ソフトバンク<9984>、JT<2914>、NTT<9432>などが有名だ。中でもソフトバンクののれん計上額は4兆円超と突出している。のれん計上額が増加した主な要因はソフトバンクにおける増加といっても過言ではない。

なお、のれん計上額が大きな企業が採用する会計基準は、ソフトバンクが「IFRS」、JTが「IFRS」、NTTが「米国基準」、キヤノンが「米国基準」、武田薬品工業が「IFRS」となっている。

のれんの計上額が多い主な企業(カッコ内)は決算

会計基準企業名証券コードのれん残高
IFRSソフトバンクグループ(2017/03期)<9984>4兆1754億円
IFRS日本たばこ産業(JT)(2016/12期)<2914>1兆6019億円
米国基準NTT(2017/03期)<9432>1兆3146億円
IFRS武田薬品工業(2017/03期)<4502>1兆227億円
米国基準キヤノン(2016/12期)<7751>9364億円
IFRS電通(2016/12期)<4324>7187億円
IFRSパナソニック(2017/03期)<6752>6651億円
IFRS日立製作所(2017/03期)<6501>5272億円
米国基準ソニー(2017/03期)<6758>5225億円
米国基準富士フイルムホールディングス(2017/03期)<4901>4998億円

実は怖い「のれん」減損の影響

のれんの計上額が多額になってくると、のれんの減損処理の影響が心配になる。のれんの減損を行うと、巨額の損失が計上されるケースも多いからだ。

たとえば、資生堂<4911>は2017年11月13日に公表した第3四半期報告書(2017年1-9月期)で米国子会社ベアエッセンシャルに関連する707億円の減損損失を計上している。このうち、商標権に関するものなどを除く純粋なのれんの減損額は430億円と大部分を占めている。

では、そもそも減損会計とはどのような会計処理なのだろうか。企業が固定資産への投資を行う際には、その固定資産を使用することによって将来的に儲けを出そうと目論んでいる。しかし、ビジネスに不確実性はつきもの。想定したとおりに事業が軌道に乗らないこともある。

そうした場合に、投資額が回収できなくなった部分について資産を取り崩し、損失に計上するのが減損会計である。具体的には、固定資産を使って将来得られるキャッシュ・フローを現在の価値に引き直し、それが投資額より低くなっている場合には差額を損失として計上しなければならない。

そして、減損会計の対象となる固定資産には、のれんその他の無形固定資産も含まれるというわけだ。

配当規制がかかる「のれん

のれんは上記のような減損損失を潜在的に内包している点で時限爆弾のような性質を帯びているともいえる。だが、リスクはそれだけではない。

たとえば、のれんの一部には配当規制がかけられている。のれんに相当する剰余金を自由に配当できるとすれば、会社の資力が低下して会社の債権者にとって安全性がおびやかされるからである。しかし、のれんの一部に配当規制がかけられているということは、配当に回されている部分もあることを意味する。また、万が一、経営破たんなどがあった場合、のれんは弁済手段にはならず、清算価値がないことにも留意したい。

これらのリスクは、のれんを償却しないで資産に計上している場合の方がより高くなるということも合わせて考えておきたいものである。

文:M&A Online編集部