目に見えない資産「のれん」とは何なのか

2017年11月2日に提出されたJT<2914>の第3四半期報告書(2017年1-9月期)によると、のれんの計上額は1兆7,190万円となっている。純資産が2兆7,280万円であることから、同社の「のれん純資産比率」は63%、2016年12月末からの9か月間でものれん計上額は7.3%増加している。

これほど大きな計上額であるにもかかわらず、預金通帳などに残高が記録されている訳でも、土地や建物のように物理的実態がある訳でもない。いわば目に見えない資産であるのれんとは一体どのような存在であり、どのような場合に計上されるのかについて迫ってみたい。

●「のれん」とは何なのか?

のれんの本質を理解するにあたって、まずはのれんがどのような場合に発生するのかを確認してみよう。のれんは一般的にM&Aが行われたときに発生する。特に、買収対象となる企業の純資産より買収金額が大きい場合に計上されるものだ。純資産とは、その企業が保有している資産(プラスの財産)から負債(マイナスの財産)を差し引いたもの、すなわち正味の財産を意味する。

一見、この正味の財産額が買収金額になりそうなものだが、実際には、買収により生み出されるシナジー効果や買い手企業が支配権を獲得することに対するプレミアムなど様々な要因から、買収金額が正味の財産額を超えることも多い。

M&A対象企業の貸借対照表(BS)

のれんの計上額は、買収金額が正味の財産額を超える額から、知的財産権など無形資産に配分される金額を差し引いて、さらに残った部分となる。つまり、のれんは、買い手が正味の財産額を超える価値を見出した部分ということができる。これは、正味の財産額を超える儲けを期待した部分、あるいは超過収益力とも言い換えられるものである。

●会社の税金や業績にはどう影響する?

のれんは、会計上、貸借対照表の資産の部に計上される。その上で、20年以内の効果が及ぶ期間にわたって定額法その他の合理的な方法により償却することとなっている。

のれんの計上額が多額である場合、毎年の償却費が損益に与える影響は大きい。たとえば、50億円ののれんを計上し、最大の20年間で償却する場合だと、毎年2.5億円の利益押し下げ要因になるということである。のれんを非償却としているIFRS国際財務報告基準)と比べると、日本基準ではM&Aによるのれん償却費が負担になると言われる所以である。

一方、税務上では、資産や負債の時価引継ぎが求められる非適格合併などがあると、会計上ののれんに相当する「資産調整勘定」が計上される。これは、ASBJ(企業会計基準委員会)による企業結合会計基準の導入に平仄を合わせ、平成18年度(2006年)税制改正により導入された措置である。資産調整勘定は、会計上と税務上の資産や負債の評価方法が異なるため、のれんとは一致しない場合が多い。

また、税務上ののれんともいえる資産調整勘定は5年償却となっているため、会計上と税務上の数値にはさらに差が生じることになる。なお、平成29年度(2017年)税制改正により、この5年償却は毎期均等償却から月割償却に変更されており、年度途中で行われたM&Aでは初年度の償却額などが変わってくることになる。

●マイナスの「のれん」もある

これまで、買収金額が正味の財産額を超える場合を想定して話を進めてきたが、実際には、買収金額が正味の財産額を下回る場合もある。その場合には、マイナスののれんである「負ののれん」が発生する。

会計上、負ののれんが発生すると、M&Aが行われた年の決算で一時の利益として処理することになり、「負ののれん発生益」が計上される。したがって、多額の負ののれんが発生すれば、その期だけ利益を大きく押し上げる要因ともなるのである。

実は、ひと昔前まで、負ののれんも貸借対照表に固定負債として計上され、規則的に償却されていたが、2010年の企業結合会計基準の改正に伴い、発生時の利益とする処理に変更された経緯がある。なお、税務上のマイナスののれんは「差額負債調整勘定」と呼ばれ、上述の資産調整勘定と同様、5年で償却されることとなっている。

このように、のれんの会計インパクトは思いのほか大きいものであり、企業業績や株価に与える影響にも配慮する必要がある。M&Aを担う経営企画などの部門と財務経理部門の連携が重要となる分野の一つであるともいえる。

(次回に続く)

文:M&A Online編集部