ビズサプリの三木です。
いったん落ち着いたかに思える東芝の会計問題ですが、子会社ウェスチングハウスを主力とする原子力事業について新規に減損が発生するとの報道がされ、これに関連して「不適切なプレッシャーの存在を懸念する指摘」が東芝内部であったため2月14日になって第3四半期の決算発表が延期されるなど、再び混沌としています。
実はウェスチングハウスがらみの減損の話は2段階あります。
1つは、2015年ごろ東芝全体で問題となった「不適切会計」の際に問題となったウェスチングハウスそのものの減損の話。
もう1つは現在問題となっているもので、ウェスチングハウスが2015年に買収したCB&Iストーン・アンド・ウェブスターという会社に関わるものです。
現在問題となっている件はニュースで見ていただくとして、今回は前者の減損について取り上げます。
2015年11月17日のプレスリリース(外部リンク)を見ると、
「2006年度に当社がウェスチングハウス社(以下、WEC)グループを買収した際、米国会計基準に基づきWECグループ及び当社連結ベースで約29億3千万ドル(当時のレートで3,500億円相当)ののれんを計上しました。」
ここで「WECグループ及び当社連結ベースで」の部分を不思議に思う人がいるかもしれません。
のれんは買収した側(つまり東芝)が計上するのが普通で、買収されたWECがのれんを計上するのは不自然です。
実はこれはプッシュダウン会計と呼ばれている会計処理で、米国会計基準で認められているものです。
子会社を買収した時ののれんとは、買収で支出した金額と子会社の(評価替え後の)純資産の差額です。
明確な資産はないけれど、その会社に何らかの価値を見出して買収していたことになります。
要するに、ブランド力とか社風とか、買収された側の会社にある何らかの価値がその実態です。
のれんは親会社の連結財務諸表で計上されますが、もともとは子会社にある何らかの価値です。
ならば子会社の財務諸表にも計上すべきと考えたのがプッシュダウン会計です。
なお、子会社は買収対価を払っていないため、
(借)のれん(貸)資本剰余金
というやや無理やり感のある会計処理が行われることになります。
このルールに基づき、WECグループの財務諸表でも3,500億円ののれんが認識されたわけです。
M&Aを実行するときに失敗を想像する経営者はいないはず。しかし、買収時の想定に反して巨額損失の計上に追い込まれるM&Aは、いつの時代にも少なからず存在する。失敗から学ぶため、その一部を見てみよう。