(後編)不適切会計と粉飾決算の違いとは?
大企業で不祥事が相次いで発覚しているが、中小企業ではどうだろうか。M&Aを実行する際、事前に財務デュー・ディリジェンスを実施することで不正の抑止力となると専門家は指摘する。
最近は日本企業も盛んにM&Aを行います。このためか、「のれん」という言葉を新聞などでもよく目にすることになりました。今日はこの「のれん」について考えてみたいと思います。少々理屈っぽい内容ですが、ご興味ある方は是非お読みください。なお、文中の意見は筆者個人の私見であることを予めご了承ください。
店舗や飲み屋の入口には、目隠しや日よけのためののれんが吊るされています。のれんには店名や屋号が描かれていて、店名や屋号で店の格がわかります。
このことから、会計上でも格式やブランドを表すものとして「のれん」という言葉が使われるようになりました。カタい言葉では「超過収益力」と説明されたりします。
格式やブランド力はどんな会社にもありますが、それがいったいいくらの価値なのかは、なかなか分かりません。
それが外から見えるようになるのが合併や買収の時です。100の純資産しかない会社を150で買収した場合、50は「目に見えない何か」に対してお金を出したことになります。この50部分が「のれん」として会計上も計上されることになります。
「のれん」についての会計上の大問題といえば、償却するかどうかです。
日本基準では20年以内で償却します。「M&A時点のブランド力は段々と無くなっていくものであるから、一定年数で消すのが正しい」という考え方です。また、「のれん」は換金できないので、いつまでも資産に計上し続けるのは良くないという考えもあります。
IFRSや米国基準では償却しません。企業はM&Aで得たブランド力をあの手この手で維持発展させるはずだから、その価値が明らかに落ちた場合(その場合は減損します)を除き償却するべきではないという考え方です。また、収益力の維持発展のために広告などにコストをかけるでしょうから、そうした費用と償却費を同時に計上するのは理論的に不整合という考えもあります。
どちらの考え方も筋は通っています。世界的には非償却が主流ですが、その場合はいつも減損リスクを抱えます。のれんはかなり巨額になりますから、不景気でのれんの減損が多発すると、それが経済をさらに冷え込ませる・・・という負のスパイラルに陥る懸念もあります。
ちなみにIFRSも米国基準ものれんは非償却ですが、反対意見もけっこう多く、決して一枚岩ではありません。
この議論は昔から行われていますが、いつまでもすっきりとは解決できない問題となっています。
ソフトバンクは米国スプリントの買収で約3,000億円ののれんを計上しました。巨額になりがちなのれんは、理論的にも実務的にも扱いが厄介と言えます。
大企業で不祥事が相次いで発覚しているが、中小企業ではどうだろうか。M&Aを実行する際、事前に財務デュー・ディリジェンスを実施することで不正の抑止力となると専門家は指摘する。