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「100億円超」の買収 、8月前半急増
お盆前の8月前半のM&Aはいつになく大型案件が目立っている。JTによるバングラデシュたばこ大手の買収を筆頭に100億円超がすでに7件。お盆明け後半戦を前に、2018年の日本企業によるM&Aを金額ランキングで振り返ると…。
東京証券取引所の「適時開示」ベースで、2018年8月の買収件数は72件(7月は54件)と、5月の64 件を上回り、今年の月間最高だった。このうち、海外企業を対象とする買収は19件、買収金額10億円超の案件は25件あり、いずれも今年の最多となった。なかでも100億円超の大型案件は1~7月で合計26件だったが、8月だけで8件に上り、集中ぶりが目立った。
東証の適時開示は上場企業に義務づけられた「重要な会社情報の開示」のこと。さまざまな開示情報のうち、経営権の異動を伴う子会社化・事業取得の買収案件(グループ内再編は除く)についてM&A Online編集部が集計した。
8月の買収件数は72件と前月の54件より3割強増えたが、これを上回る形で、海外買収が12件から19件に6割以上伸びた。海外買収件数も今年最多(4月と7月が12件)となった。買収金額10億円を超える案件は前月の12件から25件に倍増したが、このうち海外買収が11件を占めた。
最大案件はJTによるバングラデシュ第2位のたばこ事業(同国のアキジ・グループ傘下)の買収。買収金額は1645億円にのぼる。JTは3月にロシアのたばこ大手ドンスコイを約1900億円で買収することを発表(7月に買収完了)しており、これら2つの案件が今年の買収金額ランキングで4位と5位に位置する。
第一生命ホールディングス(HD)は豪生保大手のサンコープ・ライフを526億円で買収する。豪では2011年、業界トップのTALを傘下に子会社化しており、同国での生保買収は2社目。第一生命HDは1月に米リバティライフの既存保険を1400億円で買収することを発表(5月に買収完了)している。
たばこ、生保はいずれも国内市場が縮小している。こうした中、JT、第一生命HDはM&Aを軸に海外での事業展開を積極化している。
買収金額100億円超の大型案件は8件あったが、海外買収はJTと第一生命HDの2件だけ。これに対し、残る6件はそろって国内の製造業同士の案件だった。新日鉄住金は山陽特殊製鋼が実施する第三者割当増資を672億円で引き受け、子会社化(所有割合51.5%)する。合同製鉄は電炉中堅の朝日工業をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社する。取得金額は最大126億円。ADEKAは持分法適用会社の日本農薬をTOBと第三者割当増資の引き受けを通じて所有割合を現在の24%から51%に引き上げ、子会社化する。取得額は約190億円。
FUJIは半導体製造装置メーカーのファスフォードテクノロジ(山梨県南アルプス市)を219億円、マクセルホールディングスは理美容機器や電動工具の泉精器製作所(長野県松本市)を182億円、アマダホールディングスは材料供給装置大手のオリイメック(神奈川県伊勢原市)を125億円で、それぞれ子会社化する。
8月の買収金額の上位案件 | |
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1 | JT、バングラデシュ2位のたばこ事業を買収(1645億円) |
2 | 新日鉄住金、山陽特殊製鋼を子会社化(672億円) |
3 | 第一生命HD、豪生保サンコープライフを子会社化(526億円) |
4 | FUJI、半導体製造装置メーカーのファスフォードテクノロジを子会社化(219億円) |
5 | ADEKA、日本農薬をTOBなどで子会社化(190億円) |
6 | マクセルHD、家電機器の泉精器製作所を日本政策投資銀行と共同で子会社化(182億円) |
7 | 合同製鉄、電炉中堅の朝日工業をTOBで子会社化(126億円) |
8 | アマダHD、プレス機械用材料供給装置大手のオリイメックを子会社化(125億円) |
9 | アルコニックス、炭素製品メーカーの富士カーボン製造所を子会社化(81.5億円) |
10 | ユシロ化学工業、金属加工油剤メーカーの米QualiChemを子会社化(64.5億円) |
11 | 桑山、経営陣によるMBOで非公開化(52.95億円) |
12 | 麻生グループ、日特建設をTOBで子会社化(52億円) |
13 | トーホー、シンガポールの業務用青果卸販売Fresh Directなど2社を子会社化(40.3億円) |
14 | 興銀リース、自動車ファイナンス事業のインドネシアVERENA MULTI FINANCEを子会社化(39.4億円) |
15 | アウトソーシング、豪の業務改善コンサルティング会社PROJECT MANAGEMENT PARTNERSを子会社化(33.6億円) |
16 | アウトソーシング、政府向け人材派遣の英ALLEN LANEを子会社化(29.7億円) |
17 | フリービット、語学教育のアルクを子会社化(26.2億円) |
18 | OCHIホールディングス、冷凍冷蔵機器販売の太陽産業を子会社化(18億円) |
19 | 日本システム技術、ソフト開発のマレーシアVirtual Calibreグループを子会社化(17.8億円) |
20 | フィデアホールディングス、グランド山形リースを子会社化(17.2億円) |
21 | エムスリー、脳梗塞リハビリ施設運営のワイズを子会社化(15.2億円) |
22 | レック、殺虫剤「バルサン」をライオンから取得(14億円) |
23 | モーニングスター、米の資産運用会社キャレット・アセット・マネジメントを子会社化(13.3億円) |
24 | トラスト・テック、英の人材派遣会社Quattro Groupを子会社化(10億~11億円) |
25 | アジアパイルホールディングス、コンクリート杭生産などの越FECON MINING を子会社化(10億円) |
お盆前の8月前半のM&Aはいつになく大型案件が目立っている。JTによるバングラデシュたばこ大手の買収を筆頭に100億円超がすでに7件。お盆明け後半戦を前に、2018年の日本企業によるM&Aを金額ランキングで振り返ると…。