2021年7月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比8件減の62件となり、3カ月連続で前年を下回った。1~7月の累計は509件と前年同期を18件上回り、2008年(546件)以来13年ぶりの高水準にある。前月(6月)比では11件増えた。
一方、月間の取引金額は国内、海外ともに大型案件が乏しかったことから、前年同月比38%減の488億円にとどまった。1000億円を割り込んだのは今年初めてで、7月としても過去10年で最低だった。
7月は件数、金額とも低調に推移したものの、昨年来の新型コロナウイルス感染拡大による事業環境の変化を受け、M&A意欲が衰える気配は総じて見られない。
全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。
7月のM&A62件の内訳は買収50件、売却12件(買収側と売却側の双方が開示した場合は買収側でカウント)。このうち、海外案件は7件(買収5件、売却2件)。国内案件は前年並みだったが、海外案件はほぼ半減した。
金額トップはMBO(経営陣による買収)を再実施し、株式を非公開化するサカイオーベックスの案件。買付代金は最大216億円。2月から3月にかけて行われた前回のMBOは不調に終わっていた。MBOが成立した場合も、筆頭株主で旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)が株式の保有(8.33%)を継続することで合意している。
同社社長の松木伸太郎氏が設立した新会社がMBOを目的にTOB(株式公開買い付け)を実施。基幹部門の染色加工の市場縮小が続く中、制御機器事業など新分野への展開や事業の入れ替えを迅速に進められる経営体制をつくる。
DeNAは120億円を投じて、キャラクターの姿でライブ配信を楽しめるアプリを展開するIRIAM(東京都渋谷区)を子会社化。昨年8月に20%出資したが、完全子会社化により一層の事業拡大を目指す。
取引金額100億円以上は2件と今年最も少なく、1~6月に計11件を数えた1000億円以上の超大型案件も7月は途絶えた。
出版分野で比較的大型の案件があった。インプレスホールディングスは月刊誌「エアライン」など航空関連を中心とするイカロス出版(東京都新宿区)の子会社化を発表した。取得金額は約13億7000万円。インプレスはグループの中核事業の一つが出版で、パソコン解説書「できるシリーズ」、月刊誌「山と渓谷」などの発行で知られる。
金額非公表ながら、事業売却で目立ったのが昭和電工。子会社の昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が手がけるセラミックス事業を日揮ホールディングスの傘下企業に、鉛蓄電池事業を投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)などが出資するコンソーシアム(連合体)に、それぞれ売却することを発表した。
昭和電工は昨年、日立化成を約9600億円で買収し、財務基盤健全化のために2000億円規模の資産売却を打ち出しており、いずれもその一環。
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