2021年上期(1~6月)のM&A件数(適時開示ベース)は前年同期を26件上回る447件で、上期として2008年(468件)以来13年ぶりの高水準を記録した。新型コロナ禍による経済環境の変化がM&A市場にとって追い風となっているが、47都道府県ごとの状況はどうなのか。
上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、今年上期のM&A全447件について、買い手、売り手、対象(自社もしくは子会社・事業がターゲット)のいずれかの立場でM&Aにかかわった件数を集計した(一覧表)。
例えば、神奈川県のA社(買い手)が大阪府に本社を置くB社(売り手)の石川県内にある子会社C社(対象)を買収したケースでは神奈川県、大阪府、石川県をそれぞれ1件とし、逆に同じ県内ですべての完結する場合は当該県の1件のみとカウントした。
集計結果は、東京都(346件)が2位の大阪府(68件)を5倍の大差で引き離して断トツの首位。1位、2位は不動だが、3位の座は愛知県が神奈川県から奪還した。愛知県は42件と前年の20件から倍増する一方、神奈川県は前年の25件から19件に減った。
愛知県の中身をみると、県内企業が買い手となったケースが25件。県内企業が対象となったのは17件で、このうち7件は県内企業が売り手として子会社や事業を手放した。個別には、医療機器メーカーの朝日インテック(愛知県瀬戸市)が上期だけで4件の買収(うち3件は海外)を手がけたほか、製造系を中心に人材サービス会社が買収対象となった案件が4件あり、総件数を押し上げた。
上期中10件を超えたのは東京、大阪をはじめ、愛知、神奈川、福岡、千葉、兵庫、埼玉、京都の9都府県。前年14件だった北海道は7件に半減し、勢いを欠いた。
買い手、売り手、対象のいずれにも該当せず、上期段階で件数ゼロだったのは和歌山、鳥取、香川、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本の8県。西日本に集中し、国内M&A市場の「東高西低」が浮き彫りになった格好だ。
◎47都道府県:M&A件数推移(買い手、対象、売り手のそれぞれの所在地を都道府県別に集計)
2021年上期 | 2020年上期 | 2019年上期 | |
北海道 | 7 | 14 | 9 |
青森県 | 1 | 0 | 1 |
岩手県 | 3 | 2 | 0 |
秋田県 | 1 | 0 | 2 |
宮城県 | 5 | 5 | 5 |
山形県 | 1 | 1 | 1 |
福島県 | 2 | 3 | 3 |
群馬県 | 5 | 9 | 2 |
栃木県 | 2 | 2 | 2 |
茨城県 | 9 | 6 | 4 |
埼玉県 | 11 | 12 | 12 |
千葉県 | 14 | 11 | 8 |
東京都 | 346 | 336 | 285 |
神奈川県 | 19 | 25 | 21 |
山梨県 | 2 | 2 | 3 |
長野県 | 4 | 5 | 10 |
新潟県 | 8 | 5 | 4 |
富山県 | 2 | 1 | 3 |
石川県 | 7 | 4 | 2 |
福井県 | 4 | 0 | 4 |
岐阜県 | 5 | 5 | 10 |
静岡県 | 9 | 8 | 4 |
愛知県 | 42 | 20 | 28 |
三重県 | 2 | 5 | 3 |
滋賀県 | 2 | 1 | 5 |
京都府 | 10 | 13 | 18 |
大阪府 | 68 | 56 | 73 |
兵庫県 | 13 | 21 | 11 |
奈良県 | 1 | 2 | 0 |
和歌山県 | 0 | 1 | 1 |
鳥取県 | 0 | 1 | 0 |
島根県 | 1 | 2 | 0 |
岡山県 | 4 | 5 | 5 |
広島県 | 6 | 3 | 7 |
山口県 | 2 | 3 | 1 |
徳島県 | 2 | 1 | 0 |
香川県 | 0 | 1 | 3 |
愛媛県 | 0 | 6 | 3 |
高知県 | 0 | 0 | 1 |
福岡県 | 14 | 20 | 20 |
佐賀県 | 0 | 0 | 2 |
長崎県 | 0 | 1 | 0 |
熊本県 | 0 | 3 | 4 |
大分県 | 1 | 5 | 0 |
宮崎県 | 1 | 0 | 0 |
鹿児島県 | 1 | 1 | 0 |
沖縄県 | 1 | 3 | 2 |
文:M&A Online編集部
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