東電との経営統合は不可避の段階に

とはいえ中部電にとってJERAによる東電との火力発電事業の統合が吉と出るか凶と出るかは、まだまだ不透明だ。自前の燃料調達によるコスト削減も、JERAが情報力や交渉力で大手商社に勝るという前提なしには実現しない。

JERAは燃料調達や輸送のほか海外での火力発電事業に取り組んでいるが、そもそも「地球温暖化の元凶」ともいわれる火力発電の将来性が危うい。同社は2018年3月に、2025年度の純利益見通しを従来の2200億円から2000億円へ引き下げている。

これは燃料事業と海外発電事業の利益予測を2200億円から1400億円へ大幅に下方修正したため。主に海外でコストが下がりつつある再生可能エネルギーとの競争激化が要因だ。

JERAにとっては想定外だった再生可能エネルギーとの価格競争

統合が確定した国内火力発電事業による利益の600億円が加わっても、計画の達成は難しいと判断した。JERAは25年度計画で再生可能エネルギー比率を現在の5%から20%に引き上げる方針だ。

しかし、火力発電主体のJERAが大規模な再生可能エネルギー事業者と同等のコストで発電ができる保証はない。メガソーラーや風力発電で実績がある国内外企業とのM&Aが急務だ。

「東電救済」になりふり構わぬ東電と経産省が、中部電を引き入れたいがために甘い事業収支計画を提示している可能性もある。2019年の火力発電事業統合までに、東電とJERAへの徹底的なデューデリジェンス(事前調査)が必要だろう。

東電との主導権争いも懸念材料だ。火力発電事業をJERAに移管すると、原子力発電比率が低い中部電は事実上「丸裸」になる。そうなれば後戻りはできず、中部電と東電の本体同士の経営統合は不可避だろう。火力発電事業のJERAへの統合は「ゴール」ではなく、中部電・東電の経営統合という業界大再編が「スタート」する合図なのだ。

すでに中部電は2018年2月に、火力発電事業統合後もJERAでの折半出資を維持するため、火力資産の格差を穴埋めする3350億円に上る差額調整準備金の拠出を決めた。

それでもJERAの主導権を東電側が握るようなことがあれば、「救済する側の中部電が、救済される側の東電に飲み込まれる」という奇妙な結末を迎えることになりかねない。

火力発電事業一本化や将来の経営統合による合理化で得られた利益が福島原発の廃炉処理や補償に回されるようなことがあれば、明らかな「筋違い」だろう。

JERAをめぐる中部電と東電、そして経産省の駆け引きは、来るべき電力大再編の行方を左右する。これからの日本のエネルギー戦略を決定づける「100年に1度のM&A」の前哨戦として目が離せない。