「韓国企業には売らないと言われた」。こう言って肩を落とすのは韓国で半導体向け化学品事業を手がけている企業の幹部社員。医薬品の開発能力のある企業の買収のために来日した際に、日本企業から厳しい言葉を浴びせられた。

日本企業の協力で半導体向けの化学品事業が大きく伸び、年商1000億円に達する大手企業に成長したことから「日本企業には感謝している」という。

だが、日本政府が半導体向け化学品3品の輸出手続きを厳しくしたこともあり、脱半導体を目指し、100億円の資金を用意し日本企業買いに乗り出した矢先だった。

韓国企業には売らないと考えている日本企業がどの程度あるのかの調査はないが、韓国の反日感情の高まりとともに、韓国企業を遠ざけようとする動きが加速することは想像できる。

韓国企業のM&A 9年ぶりに売却が買収を上回る

東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴う韓国企業のM&A について、M&A Online編集部が集計したところ、2010年以降は日本企業による韓国企業の買収が、売却を上回っていた(2015年は買収と売却が同数)が、2019年は9年ぶりに反転。現在(8月20日)までのところ、売却は去年と並ぶ3件に達しており、買収は1件にとどまっている。

この結果は、韓国企業に日本企業が買われていることを示すが、中身を見ると状況が少し変わってくる。売却3件中2件は韓国内にある日本企業の子会社であり、残りの一件はもともと大株主だった韓国企業が日本企業を完全子会社する案件だった。

こうした日韓のM&A状況と呼応するように、大韓航空が日韓関係の悪化を理由に一部の日韓路線の運航を取りやめるほか、日本からの輸入品の放射性物資の検査強化や、日韓の交流事業の中止、日本製品の不買運動など、日韓関係悪化の影響は大きくなりつつある。

一方で、日本政府が輸出手続きを厳しくしていた半導体向け化学品の輸出を一部許可したことが伝えられているほか、韓国の文在寅大統領の発言から激しさが薄らぐなど、関係改善の糸口となりそうな現象もある。

M&Aは買い手企業と買われる企業の間に、信頼関係がないと相乗効果を発揮することが難しい。日韓両国の経済に大きな問題が生じる前に、行き過ぎた反日、行き過ぎた反韓を抑え、信頼関係が回復することを願う経済人は少なくないだろう。

文:M&A Online編集部