伊藤忠商事の人材戦略

 伊藤忠商事のリーダー選定は、同社の経営理念の承継において重要テーマである。同社は「スキップ・ワン・ジェネレーション」で次期社長を任命する。当然に人物重視であり、歴代社長の出身大学はさまざまである。創業時はファミリービジネスであった伊藤忠商事が今日まで成長を続けることができたのは、時代に合った経営トップを選任することを継続できたからであろう。

 伊藤忠商事の社長の任期は原則6年であるが、岡藤社長については現在大プロジェクトを抱えているため続投となった。これは「日本の商社でナンバーワンになる」ことに対する執念である。同社における中期経営計画に対する数字的根拠はM&Aの予算を組んでからとりあえず実行に移していくといった「絵に描いた餅」ではない。既に大型の業務提携も行い、また事業セグメントも資源に偏ること無く分散化が図れていることからも4000億円の収益基盤構築は決して非現実的ではない。

 伊藤忠商事の岡藤社長は、「他社に勝つ」という明確な目標のもと、将来ビジョンを確立し、その実践に向けた具体的な戦略を確実に意思決定していくという「オーナーシップ」を持っている。これは伊藤忠商事が創業当時から「ブレない」経営理念を踏襲しているといえよう。

強さの秘訣は人材育成にあり

 伊藤忠商事の強さの秘訣として「人材育成」が挙げられる。同社の企業理念である「先見性・誠実・多様性・情熱・挑戦」をベースとしたカリキュラムが組まれており、グローバル人材の育成も含めた「人材多様化推進計画」に03年から取り組んでいる。また10年度に伊藤忠のリーダーが備えるべき行動要件を整備し、全世界の組織長人材をデータベース化、各ディビジョンカンパニーや海外ブロックとの連携を通じて、全世界で海外収益拡大を担う優秀な人材の採用・育成・活用・登用を行う「タレントマネジメントプロセス」の仕組みを構築している。

 人材育成に戦略的に取り組むことにより「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源を有効に活用することが可能である。今や一般的になっている「ダイバーシティ」「グローバル人材」の育成に早くから着手している点が現在の事業ポートフォリオ戦略の成功にも結実しているといえよう。