救世主は「予想外」のソフトバンク?

 残念ながら、それは望み薄だ。「高付加価値のスマホに特化すべき」との意見はあるが、すでにブランドイメージが定着しているiPhoneに質的な付加価値で対抗するのは難しい。iPhoneをしのぐ高機能スマホは韓国・サムスン電子が先行しており、今や世界最大のスマホメーカーになった同社に研究開発で追いつくのは不可能だろう。

 ならば量産メーカーが手を出しにくい個性的なスマホならどうか。そこにも強力なライバルが存在する。クラウドファンディングだ。スマホは部品の汎用化が進んでおり、たとえばドライブレコーダー用の液晶パネルを流用した超小型スマホを生産することもできる。自社工場を持たないファブレスも当たり前だ。中国Unihertzの重さわずか60.4gという超小型スマホ「Jelly Pro」も、クラウドファンディングから量産にこぎつけた。

「Jelly」
Unihertzの超小型スマホ「Jelly」シリーズはクラウドファンディングでデビュー(同社ホームページより)

 そもそも純国産メーカー2社には、スマホの世界市場で社運を賭けてまで真っ向勝負するインセンティブ(動機付け)がない。ソニーは画像センサー、京セラはコンデンサーといったスマホ向け電子部品の有力メーカーでもある。アップルやサムスンと勝ち目の薄い競争をするよりも、両社に自社製の部品を採用してもらう方が簡単だし、利益率も高いはずだ。既存の国産メーカーによる「日の丸スマホ」の復権は期待できそうにない。

 唯一、国産スマホが世界で影響力を示す可能性があるとすれば、そのカギを握るのはソフトバンクグループ<9984>だろう。同社は2016年に英半導体設計大手のARMを約3兆3000億円(当時の為替レート)で買収した。ARMはスマホやタブレットなどのアプリケーションプロセッサーでは85%以上のシェアを持つ。ARMが専用設計した高性能プロセッサーを独占使用し、EMS(電子機器の受託生産サービス)事業者に量産させれば、競合他社をしのぐ高機能スマホの市場投入も可能だ。

孫正義ソフトバンクグループ会長兼社長
ARMを傘下に置くソフトバンクは国産スマホの「救世主」になるか(孫正義会長兼社長、同社ホームページより)

 あながち「夢物語」ともいえない。ソフトバンクは日本だけでなく、米国でも傘下のスプリント・コーポレーションが携帯電話事業を展開している。だが、契約数シェアは日本で3位、米国では4位と下位に沈む。かつてソフトバンクが日本国内でiPhoneを独占販売してシェアを伸ばしたように、ARMの最新テクノロジーを駆使した高機能スマホをソフトバンクとスプリントへ限定供給することで新規顧客を取り込む可能性は十分にある。

文:M&A Online編集部