東芝は昨年末に公表した米国の原発エンジニアリング会社・ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)買収に伴う損失が6800億円に膨らむようで、2017年3月期末の債務超過転落が避けられなくなりました。

何をさておいても資本増強が必要となる東芝は、1月27日に主力の半導体フラシュメモリ事業を3月末までに分社化すると決定しています。

このメモリ事業の価値を1兆5000億円と想定し、その20%未満の株式を売り出すようです。東芝全体の時価総額が1兆267億円(1月31日の終値の242円で計算)しかないため、資本増強としては効率が良さそうに見えます。

何でこれが資本増強になるのかといえば、このメモリ事業に係る資産は東芝本体に帳簿価格のまま取り込まれていますが、それを分社化して収益性も勘案して「時価評価」すると(それが1兆5000億円だそうですが)帳簿価格を大幅に上回るはずです。

それだけだと連結決算では何も変わらないため、その分社化したメモリ事業子会社の一部(20%未満)を外部に売り出すと、残る80%強は依然として東芝本体が所有しているためその資産は100%東芝の連結決算に取り込まれたままです。つまり東芝に入る売り出し資金(理論的に3000億円)はすべて「タダでもらったこと」になり、返済義務がないため資本増強となります。

逆にそのメモリ事業子会社の20%未満の株式を取得した投資家(あるいは事業会社)は、そのメモリ事業子会社の持ち分利益(20%未満)が得られるだけで、メモリ事業子会社の(もちろん東芝本体も)機関決定に全く参画できません。

単なる非上場株式の少数株主でしかないからです。またメモリ事業子会社の持ち分利益といっても、本社経費の負担割合などに手を加えればいくらでも圧縮できてしまいます。

そんな状態で3000億円も「どうぞご自由にお使いください」と差し出す投資家(あるいは事業会社)がいるとも思えず、さすがに東芝もその辺は理解しているようで調達予定額も2000~3000億円となっています。たぶん2000億円を死守すれば2017年3月期末時点の債務超過だけは回避できるのでしょう。

直感的に考えて大変に安直で、自分勝手で(唯我独尊で)、その場限りで、危機感が全く伝わってこない資本増強策です。

東芝のフラッシュメモリ事業とは、東芝というより日本のIT企業に残された数少ない世界的競争力を備えた事業です。

NAND型(スマートフォンやメモリカードなどに使われる)フラッシュメモリの世界シェア(2015年)は、サムスン電子の30.8%に次ぐ世界2位の19.4%で、サンディスク(米国)の15.6%、マイクロンテクノロジー(米国)の14.7%に先行しています。

ここで純粋に資本調達額(増強額)だけを考えるなら、このメモリ事業を「丸ごと」売却してしまうことで、たぶん2~3兆円の間で「取り合い」になるはずです。