ピーチ、ANA子会社化の衝撃(3)カギ握る親会社との「距離感」 

経営の自主性は保てるか

 電撃的な買収劇となったANAホールディングス<9202>による格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションの子会社化。2月24日夜に開かれた記者会見には、ピーチが本拠を置く関西国際空港にANAの片野坂真哉社長が駆け付けた。ANAの本社がある東京・汐留ではなく、ピーチのおひざ元で会見を開いたことに、ANAのピーチに対する配慮が見え隠れする。しかし、資本構成が変わることでピーチの経営や利用者にどんな影響があるのか、まだはっきりしない。

新興航空会社、大手との提携はもろ刃の剣

 ANAが新興航空会社と資本業務提携をするのは今回が初めてのことではない。過去にも北海道国際航空(現エア・ドゥ)、スカイネットアジア航空(現ソラシドエア)、スターフライヤーなど地方を拠点とする航空会社に対する出資や提携を行ってきた。ただ、その経緯や提携の方法は、どちらかというと、ANAによる支援色が強いものであった。

 出資比率は2割未満に抑えるが、航空機整備の受託や航空券の販売システムを提供。一方で、新興航空会社が運航する便の一部座席を買い取り、ANAの顧客に対してANAの航空券として販売する、いわゆる「コードシェア」と呼ばれる取引を行った。

 新興航空会社から見れば、大手航空会社との提携は「もろ刃の」といえる。出資を受ければ、資金面で経営は安定するし、整備の負担を軽減することができ、ITシステムも自社開発しなくて済むようになる。半面、大手航空会社に一定の業務委託料を支払うことで、独自のコスト削減の余地が乏しくなる。販売システムをANAに頼ることで、機動的な運賃の変更も難しくなる。この結果、利用者にとっては大手よりは少しは安くなっても、劇的に運賃を下げることが難しい状況が生まれた。

 これは大手航空会社による新興航空会社の実質的な「系列化」と言える。出資比率は2割未満だから、会計上は持ち分法適用会社にならない。日本では、新規航空会社の育成を促すため、新たに生まれる羽田空港の発着枠を新興航空会社に優先的に配分してきた。出資比率が2割未満であれば、新興航空会社に配分された発着枠をコードシェアを通じて大手航空会社が利用し、実質的に路線や提供座席数を拡大することが可能だった。

ANAと正面衝突したスカイマークの破たん

 こうしたANAの手法に対して、真っ向から異論を唱えてきたのがスカイマークだった。スカイマークは旅行会社のエイチ・アイ・エスが母体となって1996年に設立。和製LCCの元祖とも言える存在で、割安な運賃を武器に乗客を伸ばしてきた。一時は大手航空会社の対抗値下げに苦しんだが、2004年にITベンチャー出身の西久保慎一氏が社長に就任すると需要の大きく見込める路線に経営資源を集中するなどして業績を回復させた。機内で客室乗務員にミニスカートの制服を着せるなど、物議をかもした一件もあったが、ITシステムを自社開発して大手に運賃競争を仕掛けるなど独自の経営を進め、大手2社に対抗する「第3極」としての存在感を示していた。

 転落の原因になったのは、急速な円安による燃料費の高騰。そして国際線進出を狙って発注したエアバスの超大型機A380を巡る違約金だった。同社は自力再建を模索するが、出資者が現れず、2015年1月、民事再生法の適用を申請したのは記憶に新しい。

 その後、投資ファンドのインテグラルとともに再生支援に名乗りを上げたのがANAホールディングスだった。ANAはスカイマークに16.5%を出資、ANA便とのコードシェアなどを通じて再建を支援するとみられていた。

 破たんしたとはいえ、本来ではライバルだった企業に手を差し伸べたのは、羽田の発着枠を多く持つスカイマークが日本航空など他陣営にわたることを恐れたとの見方がある。

 しかし、ANAの思惑とは異なり、コードシェアは実施に至っていない。販売システムをANAに依存することによって、経営の自主性が失われることをスカイマーク側が懸念しているとみられる。株式の過半数を握るインテグラルがスカイマークの将来の再上場を目指しているとみられ、ANAに対してけん制する役割を果たしていると考えられる。