こんにちは。ビズサプリの花房です。
1ヶ月前の7月18日に、ソフトバンクグループの孫社長は、イギリスの半導体設計大手であるARM社を日本円換算3.3兆円で買収することを発表しました。
これは株式市場においてネガティブな驚きをもって評価され、発表後の週明け7月19日の株価は5,387円と、買収発表前の6,007円から1割下落し、10日ほどは5,300円前後の株価水準でした。
しかしその後、第1四半期決算発表の7月28日以降は上昇基調に転じ、昨日の終値で6,802円と、買収直前の株価から13%増し、買収発表直後の5,387円からだと26%も増加しています。
ARM社の買収が今後どのようなシナジーをもたらし、どの程度の貢献があるかはっきりはしていませんが、既存事業の業績の固さが安心感をもたらしているのかもしれません。
実際キャッシュ・フローで見ると、ソフトバンクはこの第1四半期で約6,800億円のEBITDA(償却前利益)を稼ぎ出していて、単純に年間ベースだと2.7兆円規模のキャッシュを生み出しています。
2016年3月期通期の年間EBITDAは2.4兆円でしたから、仮に毎期2.5兆円のキャッシュ・フローを生み出せれば、2016年6月末の有利子負債合計12.3兆円に、今回のARM社買収で新たに借り入れるとされる1兆円の合計13.3兆円は、約5年ちょっとで返済できる計算です。
もちろん既存事業の設備投資を継続的に行わなければならず、特に経営再建中のスプリントは今後も積極的な設備投資が必要であり、今回のARM社の買収によって、経営立て直しが遅れるのではないかといった懸念も当初の株価下落の要因にあったようですが、冷静に現状のキャッシュ・フロー水準を見ると、借金の絶対額は巨額であるものの、返せない金額ではないということが分かってきたということでしょうか。
またソフトバンクは虎の子のアリババ株も未だ発行済株式の32%を所有しており、持分法適用会社であるためソフトバンクのB/S上の簿価は1.2兆円に対して、上場を果たしたアリババ株の時価は、7兆円ほどあるので、仮に現在以上の株価のまま売却できれば、借金は半減できることになり、その安心感もあるのかもしれません。
いずれにしても今後は、投資家の期待通り既存事業の成長を維持し、スプリントを見事に再生させ、新たにグループに取込むARM社のシナジーを最大限に発揮できるかが焦点になって来るでしょう。