トヨタ自動車<7203>とNTT<9432>が、2020年4月9日に資本提携する。両社が約2000億円相当の第3者割当による自己株式の処分を実施し、トヨタはNTTの普通株式8077万5400株(発行済株式総数に対する所有割合約2.07%)を、NTTはトヨタの普通株式2973万900株(同約0.90%)をそれぞれ取得する。本業の自動車産業とは無関係なNTTとの資本提携に、なぜトヨタは踏み込んだのか。

「一代一業」を達成するためにNTTと資本提携

その背景には「一代一業」という豊田家の家訓がある。豊田佐吉氏が自動織機で起業したのを皮切りに、息子の喜一郎氏は自動車事業、孫の章一郎トヨタ名誉会長は住宅事業をそれぞれ立ち上げた。そして曾(ひ)孫の章男社長が乗り出したのがスマートシティ(情報通信などの新技術によるマネジメントで全体最適化が図られる持続可能な都市)という「街づくり」だった。

その実践の場といえるのが「Woven City(ウーブンシティ)」(静岡県裾野市)だ。この街でのスマートシティ実験を成功させ、新たな社業として軌道に乗せるためには、国内通信の巨人であるNTTとの資本提携が必須とトヨタは考えた。

Woven Cityは2020年1月に米ラスベガスで開かれたエレクトロニクス見本市の「CES 2020」でトヨタが発表した実験都市。2020年末に閉鎖する子会社のトヨタ自動車東日本・東富士工場跡地を再開発する。Woven Cityの敷地面積は東京ドームのおよそ15倍に当たる約70万8000平方メートルで、2021年に着工する予定だ。

トヨタが建設するWoven Cityの完成予想図(同社ホームページより)

都市設計は、ビャルケ・インゲルス・グループ最高経営責任者(CEO)の建築家ビャルケ・インゲルス氏が担当する。インゲルス氏はグーグルの新本社やレゴ本社内の「レゴハウス」など斬新なデザインで知られ、火星都市の設計にも取り組んでいる新進気鋭の建築家だ。

Woven Cityの「Woven」とは「織物」を意味する。トヨタの祖業である織機由来の言葉であると同時に、さまざまなモビリティー(移動手段)が通る道路を縦横無尽に張り巡らせているイメージで命名された。トヨタはこの街を「コネクテッド・ビークル・テクノロジー(自動運転車などネットに接続された自動車技術)のテストベッド(新技術の実証試験用プラットフォーム)と位置づけている。

自動運転車については、世界中で実証実験が実施されている。米カリフォルニア州コントラコスタ郡の「GoMentum Station(ゴーメンタム・ステーション)」のように交差点や信号などを置き、実際の街を再現した自動運転車のテスト場も存在する。だが、あくまでテストコースであり、住民はいない。

一方、Woven Cityでは5年以内にトヨタの従業員や研究者など約2000人が実際に入居して、日常生活を送る。実際に人間が暮らすことで、より実証的で踏み込んだ実験環境を実現するという。