小学館(東京都千代田区)は、AI(人工知能)型タブレット教材「Qubena(キュビナ)」を手がけるCOMPASS(東京都品川区)の全株式を取得し、子会社化した。デジタル事業に注力する小学館と、Qubenaサービスの迅速な拡充を目指すCOMPASSの思惑が一致した。 

今後、両社は小学館が保有する教材やコンテンツなどの経営資源を活用することで、Qubenaの新規教材開発を加速させるとともに、これまでにない新たな学習体験の創造を目指す。両社を結び付けた背景とは何なのか。 

教育現場のICT化の波に乗れるか 

COMPASSは2012年の創業で、これまでQubenaを主要サービスとして、一人ひとりに最適化された学習内容を提供するアダプティブラーニングを全国の小中高等学校や学習塾に提供してきた。これまでのユーザー数は2万3000人にのぼる。 

Qubenaの画面(ニュースリリースより)

「公正に個別最適化された教育」を届けることで、教育現場でのICT(情報通信技術)の普及に貢献するとの目標を掲げており、この目標達成のためにはQubenaのサービスの拡充が急務と判断。M&Aをはじめとする様々な可能性を模索していた。 

COMPASSはQubenaを使った未来型学習教室「Qubena Academy(アカデミー)」の運営や、家庭向け学習サービス「Qubena Wiz Lite(ウィズライト)」を提供しており、2018年度と2019年度に経済産業省の「未来の教室」実証事業にも採択されている。

一方、小学館は1922年創業の大手出版社で、同年に創刊した「小学五年生」「小学六年生」といった小学生を対象とした学年別学習雑誌の発行で成長。1963年に「週刊女性セブン」を、1969年に「週刊ポスト」を創刊し、現在は幼児誌から週刊誌、ファッション誌、ライフスタイル誌、コミック誌などの雑誌のほか、書籍分野でも絵本、図鑑、辞典、百科事典、文芸書、実用書などを発行している。 

若年層を中心に書籍離れが進んでいることから電子書籍なども手がけており、中でも教育のデジタル化については、これからのビジネスの柱に成長させるための取り組みを積極化させていた。

東京商工リサーチによると、小学館の2019年2月期の売上高は970億5200万円(前年度比2.6%増)で、当期利益は35億1800万円(前年度は5億7200万円の赤字)だった。2017年2月期、2018年2月期は当期損益はいずれも赤字で、売上高も横ばいの状況にあり、ここ数年は厳しい状況に置かれていることが分かる。

【小学館の業績推移】単位:億円 

  2017年2月期 2018年2月期 2019年2月期
売上高 973.09 945.62 970.52
当期損益 △8.13 △5.72 35.18

AI型タブレット教材であるQubenaは、AIが児童や生徒一人ひとりの得意、不得意を分析し、解くべき問題を自動的に出題する機能を持つため、効率的な学習が可能になる。過去の単元や前の学年の分野に、つまずきポイントがあったとしても、原因を解決するためにその児童や生徒が解くべき問題に誘導する。

また実際のノートと同じようにペンを使って手書きで学習を進めることができるほか、コンパスや分度器を使った作図や関数のグラフ作成も可能という。

さらに、先生がクラスの学習進度や学力レベルに応じたテストや宿題などをQubena上で作成して配信することもできる。

文部科学省は小中学校で、1人1台の学習用端末と高速通信ネットワークを整備する構想を進めており、今後教育現場のICT化が急速に進むことが見込まれている。 

小学館とCOMPASSは、このデジタル化の波に乗り、企業の成長につなげることができるだろうか。これからM&Aの成果が試されることになる。

文:M&A Online編集部