総合免税店大手のラオックスは子会社を含めて160人規模の希望退職者の募集を始めた。同社の主要顧客は中国からの訪日観光客。足元では中国発の新型コロナウイルスの感染拡大で、訪日客が激減し、業績を直撃する事態となっているが、理由はそれだけにとどまらない。

爆買いブームの落日とともに、今回の希望退職者募集は中国人観光客に依存する体質からの転換という構造的な課題を改めて突き付けた形だ。

集客の中心が「団体ツアー」から「個人旅行」に

日本政府観光局(JNTO)によると、2019年の訪日観光客数は前年比2.2%増の3188万人で、過去最高を更新した。韓国からの訪日客が約25%減の558万人に落ち込んだものの、中国は14.5%増の959万人と2ケタ台の伸びを示した。

中国人観光客が訪日旅行市場全体を牽引する構図に変化はないものの、近年、その中身は様変わりしている。個人旅行(FIT)化の進展だ。2015年~16年に最高潮を迎えた「爆買い」を支えたのは中国からの団体ツアー客だったが、その後、リピーターなど個人客が増加し、売場づくりでも脱団体客が急務となっている。

もちろん、ラオックスが手をこまぬいていたわけではない。中国からの団体ツアー中心の集客から、世界各国から訪日する個人旅行者の集客に軸足を移してきた。物販を主体とした“モノ”消費から、イベントなどを絡ませた体験型の“コト”消費の提供に力を注ぐなどビジネスモデルの変革を進めてきた。

その最中に、同社を襲ったのが昨年末からの新型コロナウイルスの感染拡大だ。今年に入ると、中国人観光客は急減し、本来なら一番の稼ぎ時である春節(旧正月)商戦も不発に終わり、業績悪化が必至となっている。

組織・人員の見直し、ラオックス本体で140人募集

ラオックスは、中国からの訪日客に依存する体制からの転換が必要なことが改めて明確になったとし、新たな事業体制の構築に向けた組織・人員の見直しに踏み切る。全国に35店舗を展開するが、今後、不採算店の閉店・集約が予想される。

今回の希望退職者はラオックス本体で140人程度、ギフト用品を手がける子会社のシャディ(東京都港区)で20人程度を募集する。ラオックス本体で140人は全従業員の約2割にあたる。

対象者はラオックス=販売専門職の正社員・契約社員、販売専門職以外の40歳以上勤続2年以上の正社員・契約社員、シャディ=50歳勤続10年以上の正社員・契約社員。募集期間はいずれも2月17日~3月6日で、3月31日を退職日とする。規定の退職金に特別退職金を加算して支給する。

ラオックスの2019年12月期業績は売上高9.8%増の1295億円、営業赤字31億円(前の期は9億4300万円の赤字)、最終赤字78億円(同10億7700万円の赤字)。利益面は営業、最終とも2年連続の赤字だ。

“ジェットコースター経営”にどう決別?

ラオックスは1990年代、日本を代表する家電量販店の一つだった。業績低迷に伴い、2009年に中国の家電量店大手、蘇寧電器(現蘇寧易購)の傘下に入り、免税店に業態を転換した。

2010年代半ばの爆買いブームの最中、同社銀座店の周りには大型観光バスが列をなし、中国人団体客が炊飯器を大量購入する様子がしばしばニュースとなったのは記憶に新しい。地方都市やクルーズ船が発着する港の周辺にも店舗を拡大した。

2015年12月期には売上高が926億円と1年で8割増を達成し、最終利益80億円をたたき出した。ところが、中国政府の「爆買い規制」のあおりなどで、翌年は600億円台に売上高を落とした。ここ2年は売上高を大きく伸ばした半面、赤字に陥り、利益がついてきていないのが実情だ。

業績が大きくアップダウンする“ジェットコースター”とどう決別し、持続的な成長基盤を築くことができるのか。

◎ラオックスの業績推移(決算期は12月、単位は億円)

年度売上高 営業利益 最終利益
2019 1295 △31 △78
2018 1179 △9.4 △10
2017 642 1.3 1
2016 627 △9.5 △15
2015 926 85 80
2014 501 17 12
2013 331 △16 △32


文:M&A Online編集部