新型コロナの夏、日本企業が絡む大型M&Aが相次いでいる。その顔ぶれはセブン&アイ・ホールディングス、日本ペイントホールディングス、武田薬品工業。いずれも国境をまたぐ国際案件で、このうちの2件は「兆円」を超える。

世界的なコロナ感染拡大で海外企業との大型M&Aは今年に入り、パタリと途絶えていたが、8月になって突如息を吹き返した形だ。

セブン&アイ、米コンビニ買収は歴代4位

先陣を切ったのはセブン&アイ。8月初め、米国3位のコンビニエンスストア「スピードウェイ」を約2兆2176億円で買収すると発表した。買収金額は日本企業による海外買収として歴代4位となる破格の案件だ。

スピードウェイは米石油精製大手マラソン・ペトロリアムの傘下で、ガソリンスタンド併設型コンビニを約3900店舗展開する。セブン&アイの米子会社「セブン-イレブン」は全米第1位の約9800店舗を持つが、シェアは6%程度。業界1位と3位の有力ブランドがタッグを組むことで、シェアは8.5%に高まり、2位のアリメンテーション・カウチタードをシェアで2倍以上突き放す。

セブン&アイは2005年に“本家”の米セブン-イレブンを完全子会社化。2017年には中堅コンビニのスノコLP(約1100店舗)を約3650億円で買収している。

日本ペイント、シンガポール企業の傘下に

セブン&アイのケースとは反対に、買われる立場となるのが塗料国内トップの日本ペイントホールディングス。8月21日、筆頭株主のシンガポール塗料大手ウットラムグループの傘下に入ると発表した。

ウットラムによる取得金額は1兆1851億円に上り、日本企業をターゲットにした買収案件としてこちらは過去2番目のスケールだ。

東芝の経営再建に絡んで2018年に米投資ファンドのベインキャピタルが主導する日米韓連合が東芝メモリ(現キオクシア)を約2兆円で買収したが、これに次ぐ。

ウットラムは日本ペイントの実施する第三者割当増資を引き受け、出資比率を現在の39%から59%に引き上げ、2021年1月1日に子会社化する。日本ペイントの上場は維持される。

ウットラムが単独で営むインドネシア事業やウットラムとアジア各国で展開する合弁事業を日本ペイント側に集中させる事実上の経営統合を狙いとする。だが、日本ペイントはウットラムから事業を取り込む対価として新株を割り当てる結果、支配権を握られるのを許容した形だ。

日本ペイントHDの東京事業所(東京・南品川)

武田、大衆薬事業を米投資ファンドに売却

武田薬品工業は8月24日、ビタミン剤「アリナミン」や風邪薬「ベンザ」などの一般医薬品(大衆薬)を手がける100%子会社の武田コンシューマーヘルスケア(東京都千代田区)を米投資ファンドのブラックストーンに売却すると発表した。売却金額はおよそ2400億円に上る。

武田は消化器系疾患、希少疾患、オンコロジー(がん)など収益性の高い医療用医薬品事業に経営資源を集中している。社運をかけて2019年1月に、アイルランド製薬大手のシャイアーを、日本企業によるM&Aとして過去最大となる約6兆2000億円で買収したのはその象徴だ。

今回の武田コンシューマーヘルスケアの売却は、シャイアー買収で膨らんだ借入金の圧縮の一環。非中核と位置づける一般医薬品事業を切り離すことにした。武田コンシューマーは投資ファンドのもとで、今後、株式上場を目指すとみられる。

主力の「アリナミン」は1954年に錠剤を発売して以来、同社の看板商品。87年にはドリンク剤も発売した。しかし、これら一般薬事業のウエートは3兆3000億円近い武田の連結売上高の2%程度に過ぎなかった。

武田薬品の看板商品「アリナミン」シリーズ

今年は7月まで、取引金額1000億円を超える大型M&Aは、ホームセンターのアークランドサカモトが同業のLIXILビバを子会社化(約1085億円、6月発表)する案件など2件にとどまっていた。それが一転、8月に入り、日本のM&A史に残る大型案件が集中した。

◎日本企業が絡む大型M&Aの上位10(HDはホールディングスの略)

 買手企業対象企業買収金額発表年
1武田薬品工業アイルランド・シャイアー6兆2000億円2018年
2ソフトバンクグループ英ARMホールディングス3兆3000億円2016年
3日本たばこ産業英ギャラハー2兆2500億円2006年
4セブン&アイ・HD米スピードウェイ2兆2000億円2020年
5米ベインキャピタル東芝メモリ2兆円2017年
6ソフトバンク英ボーダフォン日本法人1兆9000億円2006年
7ソフトバンク米スプリント・ネクステル1兆8000億円2012年
8サントリーHD米ビーム1兆6500億円2014年
9ウットラム・グループ
(シンガポール)
日本ペイントHD1兆1851億円2020年
10アサヒグループHD豪カールトン1兆1400億円2019年

※M&A Online編集部調べ。発表年はいずれも買収計画の公表時

文:M&A Online編集部