デンカ<4061>は2020年8月13日から、15分で新型コロナウイルス感染の陰性、陽性が分かる新型コロナウイルス感染診断キットの販売を始める。生産能力は1日最大10万検査分で、販売提携先の大塚製薬(東京都千代田区)も9月1日に発売する。

同社は新型コロナウイルス感染症の治療薬として臨床試験が進んでいるアビガンの原料となるマロン酸ジエチルを2020年6月から出荷しており、両製品を2本柱に新型コロナウイルスビジネスを展開している。

これら製品による2021年3月期の業績への影響は精査中としているが、プラスに働くのは間違いなく、8月7日に発表した減収減益予想が修正される可能性もありそうだ。

コロナ対策は社会的責務 

同キットは特別な検査機器を必要とせず、一般の医療機関でも新型コロナウイルス感染の有無を簡単に診断できる。2020年3月から国立感染症研究所と共同研究に取り組んでおり、通常は開発から製造販売承認取得まで1年半から2年かかるが、公的機関や研究機関の協力が得られたことから、承認取得までの期間を約半年に短縮できたという。

デンカはインフルエンザの迅速診断キットの国内トップメーカー。現在、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの両方の感染を同時に診断できる機器の開発を進めているほか、判定時間のさらなる短縮などにも取り組んでいる。

一方、アビガンの原料であるマロン酸ジエチルは、合成香料、農薬、医薬品などの原料として使用される有機化合物で、日本政府による200万人分のアビガンの備蓄方針に沿って2017 年4 月まで使用していた設備を再稼働し生産を始めた。

デンカは国内唯一のマロン酸ジエチルのメーカーで、同社では新型コロナウイルス感染症への対策を社会的責務とらえ、日本政府の再稼働要請に応じた。

業績の落ち着く先は

デンカは1915年に肥料である石灰窒素の製造、販売を目的に創立。その後、接着剤やゴムなどの有機合成分野に進出し、さらに石油化学に事業領域を広げたあと、半導体や電子部品分野にも参入。現在は特殊合成ゴムや機能樹脂、肥料、電子回路基板、食品包装材料、医薬品などを手がけている。

同社の2021年3月期は売上高3600億円(前年度比5.5%減)、営業利益310億円(同1.9%減)、経常利益290億円(同3.4%減)、当期利益210億円(同7.5%減)と減収減益の見込み。

この予想は2020年9月末までに新型コロナウイルス感染拡大の影響が収束するとの前提のもとに作られており、感染拡大の影響が長引けば業績悪化につながる可能性がある。半面、診断キットやマロン酸ジエチル事業にとっては増収要因となる。果たして業績の落ち着く先は。

文:M&A Online編集部