米トランプ大統領が新型コロナウイルスのワクチン生産支援のため、富士フイルムの米国子会社に約270億円を拠出することを明らかにした。英国政府は新型コロナウイルスのワクチンを2億5000万回分確保した。同ワクチンを巡る動きが慌ただしくなってきた。

新型コロナウイルスのワクチン開発については欧米企業が先行し、早ければ年内にも実用化される見通し。日本ではワクチン開発が進んでいるものの実用化は早くても2021年春ごろになりそう。

日本政府は海外製ワクチンの確保に動いており、日本でのワクチン実用化の時期が早まる可能性もある。日本が置かれた状況を見てみると。

英アストラゼネカが日本に供給

英国の製薬大手アストラゼネカは2020年6月26日に、同社が英オックスフォード大学と共同開発している新型コロナウイルスワクチンの日本への供給について、日本政府と具体的な協議を進めることに合意したと発表した。

アストラゼネカは日本で第一三共<4568>、明治ホールディングス<2269>傘下のMeiji Seikaファルマ(東京都中央区)、KMバイオロジクス(熊本市)の計3社と協力してワクチンの国内生産に取り組むことで合意しており、原液の供給を受けた3社がバイアル(注射剤を入れるための容器)充填から保管、配送などの接種に必要な準備を進める。

アストラゼネカのワクチンは弱毒化したチンパンジー由来の風邪のアデノウイルスに、新型コロナウイルスの表面にある突起状のたんぱく質(スパイクたんぱく質)の遺伝物質を含んだもので、ワクチン接種後に体内でスパイクたんぱく質を攻撃する物質を作り出すことで、新型コロナウイルスの感染を防ぐ仕組み。

アストラゼネカは7月22日に同ワクチンの第1、第2相試験で良好な結果が得られたと発表しており、早期の実用化に向け期待が高まる。

日本製ワクチンの実用化は早くて来春

日本企業によるワクチン開発では、先頭グループにいるのがアンジェス<4563>。同社はDNAワクチンの第1、第2相試験を7月末に終える予定で、その後第3相試験に移り、2021年春の実用化を目指すという。

DNAワクチンは、ウイルスが持つたんぱく質を作り出すプラスミドと呼ばれる環状の遺伝子(DNA)から成るもので、ウイルスを用いないため安全性が高いといわれる。

このほかにも塩野義製薬<4507>が子会社のUMNファーマ(秋田市)が保有する昆虫細胞などを用いた、たんぱく発現技術を活用して、新型コロナウイルス用のワクチンの開発に取り組んでおり、年内にも臨床験に入りたい考えだ。

来春に臨床開始企業も

第一三共は6月に、新型コロナウイルスの遺伝子(mRNA)ワクチンの開発に着手した。すでに動物モデルを用いた試作mRNAワクチンの薬理評価で好結果を得ており、2021年3月ごろの臨床試験開始を目指す。

第一三共とともにアストラゼネカのワクチン供給に協力するKMバイオロジクスも5月に、感染力をなくしたウイルス粒子などから作る不活化ワクチンの開発に着手しており、2021年春以降に臨床試験を始める計画だ。

世界では100を超えるワクチン開発が進んでおり、臨床試験に入っているものも20を超えている。DNAワクチンや不活化ワクチンなどさまざまなタイプがあり、現時点ではどのタイプが有効なのかは明らかになっていない。

文:M&A Online編集部