ダイセル<4202>が、営業利益の5倍を超える1685億円を投じてエンジニアリングプラスチックメーカーのポリプラスチックス(東京都港区)の完全子会社化に乗り出した。

ポリプラスチックスは1964年にダイセルと、米国の化学品メーカー・セラニーズが合弁で設立した企業で、現在ダイセルが55%、セラニーズが45%の株式を保有する。

両社間には知的財産を巡る係争や、成長戦略に対する考え方の相違などがあったことから、ダイセルが完全子会社化することで合意(株式取得日は未定)した。

ダイセルは完全子会社後に、ポリプラスチックスを核とする事業再編に取り組む計画で、M&Aやアライアンスなどによる新事業の獲得や業界再編が一気に表面化しそうだ。

制約なくなるM&Aや地域展開

ポリプラスチックスは、ファスナーや自動車のドアロック、シートベルトロック機構などに使われるポリアセタールや、タブレット端末やスマートフォンなどのコネクターに用いられる液晶ポリマー、自動車のワイヤーハーネス用コネクターや食品容器などに使われるポリブチレンテレフタレートなどのエンジニアリングプラスチックを手がける。

2020年3月期の売上高は1354億4800万円、営業利益182億300万円、経常利益171億5700万円、当期利益124億4500万円だった。

ダイセルはポリプラスチックスの完全子会社化について、ポリプラスチックスを熟知しているためリスクが低く、のれんが生じないため1株当たり当期利益が2021年3月期予想よりも約25%増加(半期分を取り込んだとの仮定)するとみる。

さらに、これまではM&Aや地域展開などに設けられていた制約がなくなることで、数百億円規模での事業創出が可能としたうえで、今回の完全子会社化はダイセルよりも「収益性や資本効率の高い事業への投資」と位置付ける。

ダイセルは1908年に、日本セルロイド人造絹糸として発足し、その後1919年にセルロイドメーカー8社が合併して大日本セルロイドとして誕生した企業。

セルロース事業や、有機合成事業、合成樹脂事業などを手がけており、2020年3月期は新型コロナウイルスの影響などもあり、売上高は4128億2600万円(前年度比11.2%減)、営業利益296億4400万円(同42.1%減)、経常利益317億8100万円(同40.5%減)、当期利益49億7800万円(同85.9%減)という厳しい内容だった。2021年3月期も引き続き厳しい状況に変わりはなく、営業利益は40%を超える減益を予想する。

エンジニアリングプラスチックは耐熱性や電気特性、機械特性などが優れており、金属に代わる素材として用途が拡大している。ポリプラスチックスの完全子会社化は、業績悪化が続くダイセルにいつ、どのような形で反撃の機会を提供することになるだろうか。

【ダイセルの業績推移】単位:億円、2021年3月期は見込み

  2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期
売上高 464841283860
営業利益 511296175
経常利益 534317195
当期利益 35349100

文:M&A Online編集部