富士フイルムホールディングス(HD)<4901>が、新型コロナウイルスに関する検査、治療、予防の全領域で積極策を推し進めている。 

傘下企業の富士フイルム和光純薬(大阪市)が7月31日に、唾液から1時間で新型コロナウイルス遺伝子を検出することのできる試薬と検出キットを発売した。 

同じく傘下の富士フイルム富山化学(東京都中央区)は、新型コロナウイルス治療薬として期待されているアビガンの生産能力を、2020年9月までに生産を始めた3月上旬比約7倍となる月間約30万人分に高める増強計画に取り組んでいる。 

さらに、ワクチンについても米国子会社のフジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズが米国政府から約270億円の支援を受け、ワクチン候補の原薬製造設備を拡張する。 

富士フイルムHDは、このほかにも新型コロナウイルス感染症の医療現場の負担軽減につながる医療機器の供給や、治療薬候補となる抗体医薬品の受託製造体制の構築なども目標に掲げており、新型コロナウイルスと戦う武器はさらに増えそうだ。全面対決の勝算は。 

インド企業とライセンス契約 

富士フイルム和光純薬が発売したPCR検査用前処理試薬は、少量の同試薬を唾液などに加えるだけで煩雑なRNA抽出、精製工程を簡略化できるため、前処理時間がこれまでの約1時間から10分ほどになる。 

新型コロナウイルス遺伝子検出キット

一方、遺伝子の検出キットは新型コロナウイルスの遺伝子とヒトの遺伝子の両方を検出することで、偽陰性を防止できるようにした。 

富士フイルム和光純薬は1922年に武田薬品工業の化学薬品部門を分離して発足した企業で、2017年に富士フイルムの100%子会社となり、2018年に富士フイルムファインケミカルズと統合し現社名となった。試薬、化成品、臨床検査薬の製造、販売などを手がけている。 

富士フイルム富山化学が進めているアビガンの増強については、富士フイルム和光純薬が医薬品中間体の生産設備を増強するとともに、原料メーカーや協力会社など国内外の企業と連携して取り組んでいる。

7月にはインドの大手製薬企業ドクター・レディーズ・ラボラトリーズと、医療品提供会社のグローバル・レスポンス・エイドの両社に海外でのアビガンの開発権、製造権、販売権を独占的に与えるライセンス契約を結んだ。

ワクチンの大量生産に対応

フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズはワクチン候補の原薬を製造しているノースカロライナ拠点に続き、テキサス拠点でも同ワクチン候補の原薬製造を始める。 

2020年7月に、米国バイオテクノロジー企業ノババックスから、2020年秋に計画されている最大3万人規模の第3相の臨床試験に向けた原薬製造を受託し、ノースカロライナ拠点での原薬製造を始めていた。 

今回はワクチン候補原薬の大量生産ニーズに対応して、テキサス拠点の製造設備を拡張することにした。

富士フイルムHDの2020年3月期は新型コロナウイルスの影響で減収減益を余技なくされた。2021年3月期についても業績予想は未定としており、厳しい環境下にある。 

検査、治療、予防の全領域で新型コロナウイルスと向き合う同社にとって、新型コロナウイルスとの闘いに勝利すればおのずと業績も反転するはず。その時期はそう遠くはなさそうだ。

文:M&A Online編集部