新型コロナウイルスは小売業を直撃した。臨時休業・営業時間短縮、消費者の外出自粛などが響き、売り上げを大幅に落とす企業が続出した。そうした中、日本の小売業として歴代トップの超大型M&Aが飛び出した。セブン&アイ・ホールディングスが2020年8月、米コンビニ第3位のスピードウェイを2兆2176億円で買収すると発表した。

セブン&アイ、北米市場で競合を突き放す

セブン&アイが買収するスピードウェイはガソリンスタンド併設型コンビニ約3900店舗を全米に展開する。セブンの米子会社「セブン‐イレブン」は全米最大の約9800店舗を持つが、シェアは6%程度。スピードウェイを傘下に収め、北米のコンビニ市場で競合勢を突き放し、業界リーダーとしての地位を確立するのが狙い。

スピードウェイ買収話は春に一度表面化したが、金額が折り合わず、いったん断念。新型コロナなどを受けて買収金額が低下したタイミングで再交渉がまとまった形だ。

DCMとニトリが「島忠」争奪

コロナ禍に伴う巣ごもり需要を取り込んで業績好調のホームセンター業界を揺るがせたのが島忠の争奪戦。業界2位のDCMホールディングスは10月初め、同業で首都圏を地盤とする中堅の島忠に対して完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を開始。買付金額は1636億円。島忠も賛同するTOBは成立が確実と見られていた。

ところが、同月末に事態が急変。隣接する家具業界から最大手のニトリホールディングスが島忠へのTOBに名乗りを上げたのだ。ニトリはDCMを1300円上回る5500円の買付価格を提示(買付金額は2142億円)。島忠はDCMのTOBへの賛同を撤回し、ニトリの提案を受け入れた。

結果はニトリの勝利。12月末にTOBが成立した。ニトリが争奪戦を制したことで、業界の垣根を超えてホームセンター再編が加速する可能性が出てきた。実際、ホームセンター業界では再編の足音が高まっている。

TOB合戦の末に、ニトリホールディングスの傘下に入ることになった島忠(東京・中野の店舗)

2020年夏、新潟県を本拠とする業界11位のアークランドサカモトが約1085億円を投じて、同6位のLIXILビバ(現ビバホーム)を子会社化した。小が大を飲む買収劇とあって耳目を集めたが、狙いは首都圏での基盤強化だ。関西を地盤とする業界3位のコーナン商事も2020年こそ目立った動きはなかったものの、ここ数年来、M&Aをテコに東上作戦にアクセルを踏み込んでいる。

実は、ホームセンターの市場規模は20年近く4兆円前後の横ばい状態。首都圏の攻防次第で業界地図が塗り替わりかねない情勢にある。DCMは島忠を傘下に収め、ライバルのカインズを引き離してトップに立つ目算が狂い、戦略の見直しを迫られることになった。

苦戦が続く百貨店では、三越伊勢丹ホールディングスが不動産賃貸子会社の三越伊勢丹不動産を米投資ファンドのブラックストーンに譲渡を決めた。高島屋は発酵惣菜の子会社を貝印(東京都千代田区)に譲渡した。

栃木、広島、神奈川などで地場スーパー買収

地場スーパーの買収は栃木、広島、神奈川県などであった。北海道・東北を地盤とするアークスは栃木県を中心に31店舗展開のオータニ(宇都宮市)と2021年3月1日に経営統合することで基本合意した。地場スーパーを糾合し、大手勢に対応する。

四国を地盤とするフジは広島県備後地区を中心にスーパー11店舗を展開するニチエー(広島県福山市)を、G-7ホールディングスはユニー子会社でミニスーパー「miniピアゴ」を東京・神奈川で73店舗持つ99イチバ(横浜市)を傘下に収めた。

他業態からは、ドラッグストア準大手のクリエイトSDホールディングスが「ゆりストア」5店舗を展開する百合ヶ丘産業(川崎市)を子会社化した。ドラッグストア・調剤薬局と食品スーパーとの複合出店や食品取り扱いノウハスの共有による相乗効果を見込む。「ゆりストア」は60年の業歴を持つ。

家電量販店首位のヤマダホールディングスは注文住宅のヒノキヤグループ(東証1部)を約126億円で子会社化した。2019年には大塚家具を傘下に収めており、家電にとどまらず、住まい全般への事業展開を加速中だ。

リユース品業界でM&A件数が2ケタに

件数増が際立ったのがリユース品(中古品)関連。18年、19年は各4件だったが、2020年は13件に急増した。市場拡大を背景にブランド品、貴金属、中古家電など一般消費者向けにとどまらず、中古農機、中古トラックといったプロ向け分野にもM&Aが波及した(表参照)。今や中古品市場は約2兆円(乗用車、住宅を除く)とされる。

◎2020年:中古品関連の主なM&A

発表月 買い手 対象企業・事業
4月 SHIFT エスエヌシー(大阪市、パソコンリユース)
BuySell Techonologies バンク(東京都渋谷区)のリユース品即時買取アプリ「CASH」事業
TRUCK-ONE SUN AUTO(北九州市、東南アジア向け中古トラック販売)
マーケットエンタープライズ 旺方トレーディング(鳥取市)の中古農機買取事業
5月 マーケットエンタープライズ アグリステージ(三重県明和町)のネットによる中古農機売買事業
テイツー 山徳(金沢市、ゲーム・アイドルグッズなどリユース品売買)
ハードオフコーポレーション エコプラス(宮城県名取市、リユースショップ60店舗を展開)
6月 ウイルテック サザンプラン(東京都新宿区、ビジネスホンなどOA機器買取・販売)
8月 バリュエンスホールディングス NEO‐STANDARD(東京都墨田区、ブランド品・貴金属買取)
オークネット ギャラリーレア(大阪市、ブランド品買取・オークション運営)
BuySell Techonologies ダイヤコーポレーション(東京都渋谷区、ブランド品買取・オークション運営)
10月 トレジャー・ファクトリー ピックアップジャパン(静岡県磐田市、リユースショップ・質店運営)
ゴルフ・ドゥ ゴルフ・ドゥ九州(熊本市、中古ゴルフクラブ買取)の6店舗

文:M&A Online編集部