帝国データバンクが2020年度上半期(4月-9月)の倒産状況(負債1000万円以上の法的整理)をまとめたところ、倒産件数は3956件で、2004年度下半期以来の4000件割れとなった。
多くの企業が新型コロナウイルスの影響で業績が悪化しているものの、資金繰り支援策「持続化給付金」の導入や、銀行による貸出金の増加などにより、倒産件数が減少したものと見られる。
ただ、新型コロナウイルス感染症拡大の収束が見込めず、業績の本格回復にはまだまだ時間がかかりそうなだけに、給付金や融資の効果は一時的なものといわざるを得ず、コロナ収束が長引けば大量倒産の危険性もありそうだ。
帝国データバンクによると、2020年上半期の倒産件数(3956件)は2000年度以降、上半期としては2000年度上半期(3349件)に次ぎ2番目に少なかった。
負債総額は6012億5000万円で、2000年度以降の半期ベースで最小だった2019年度上半期(5646億4800万円)に次ぐ過去2番目の低水準となった。
政府は新型コロナウイルスの影響で業績が悪化している中小企業などを対象に、事業の継続を支え、再起の糧となることを目的に「持続化給付金」制度を設けており、10月5日までに約346万件、約4兆5000億円を支給している。
帝国データバンクでは「2020年度上半期の銀行の貸出金残高も大きく伸びており、こうした給付金や実質無利子・無担保の制度融資などが奏功し、企業倒産の抑制につながったと見られる」と分析している。
ただ、新型コロナウイルスの影響が大きい飲食業や宿泊業では状況が異なる。飲食業の2020年度上半期の倒産件数は392件で、上半期としては過去最多。半期ベースでは過去最多の2019年度下半期(409件)に次ぐ2番目となった。
また宿泊業の2020年度上半期の倒産件数は73件で、2011年度上半期(74件)に次いで過去2番目の高水準となった。
2020年度上半期は業界の特性によって倒産状況がまだら模様になったわけだが、時間の経過とともに給付金や融資の効果が薄まってくれば、他の業界でも飲食業や宿泊業と同様の状態に陥る危険性は否定できない。
帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルスの影響で、業績予想の下方修正を行った上場企業が 9月30日までに1099社となり、下方修正を行ったことで減少した売上高の合計は約10兆979億6100 万円に達した。
小売業最大手のイオン<8267>が、2021年2月期第2四半期決算で、575億5600万円の最終赤字に陥るなど、赤字を余儀なくされる上場企業が相次いでおり、企業経営は極めて厳しい状況にある。大手企業の業績不振は中小企業の業績にも大きな影響を与えることは間違いない。
倒産件数の減少は嵐の前の静けさといえそうだ。
文:M&A Online編集部
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