結婚式場運営大手のテイクアンドギヴ・ニーズ<4331>が、9月30日海外ウエディングを手掛ける子会社グッドラック・コーポレーション(品川区)を、不動産業のケン不動産リース(港区)に売却します。この取引でT&Gは株式譲渡の特別損失16億円を計上する見込みです。

新型コロナウイルスの感染拡大で不要不急の渡航が禁止され、海外ウエディングは壊滅的な打撃を受けました。T&Gはこの影響が長期化することを見越して子会社の譲渡を決断。国内の婚礼に経営資源を集中して立て直しを図ります。

海外ウエディングは新型コロナウイルス前から、過当競争によるシェアの取り合いが激しい市場でした。グッドラックは緊急事態宣言前の2019年12月期で営業損失2億4500万円を計上しています。今回のM&Aは、コロナが業界再編を促した典型的な一例とみることができます。

この記事では以下の情報が得られます。

・グッドラックの業績推移
・海外ウエディングビジネスの現状

2007年に連結子会社化した盟友と離別した事情

カタタニリゾート
2018年プーケットにオープンした「カタタニリゾート」(画像は決算説明資料より)

グッドラック・コーポレーションは2003年設立。ハワイ、グアムなどを中心とした婚礼プロデュース事業の会社です。代表の堀田和宣氏は設立当初の1998年にテイクアンドギヴ・ニーズに入社し、婚礼のノウハウを学びました。T&G創業者の野尻佳孝氏とは盟友ともいえる間柄です。

T&Gは2005年にグッドラックに出資し、2007年に73.8%の株式を取得して連結子会社化しました。海外ウエディングの祖ワタベウェディング<4696>が、海外旅行取扱業を直営化して本格的に事業化したのが1998年。海外ウエディング市場は伸び盛りの時期でした。

海外ウエディングのハイシーズンは国内の結婚式と同じく春と秋。海外のリゾート地にあるホテルにとって、団体でやってくる婚礼客は閑散期集客という側面で頼もしい存在でした。日本国内では格式にとらわれる面倒な大規模結婚式を避け、気心の知れた身内だけで挙式をし、ハネムーンも兼ねられる海外ウエディング需要は膨らみます。参入障壁が低いことから、海外ウエディングのプロデュース会社も増加しました。

リゾートホテルは、多くの提携先を持っていた方が集客面で有利です。マリオットやヒルトンなどが展開する有名ブランドホテルも、複数のプロデュース会社と提携するようになります。やがてプロデュース会社は、ホテルの建物や敷地内にチャペルを建設。他社との差別化を図るようになりました。

しかし、結婚を予定するカップルの多くはプロデュース会社ではなく、HISやJTBなどの旅行代理店を通して挙式の相談をするようになります。2019年のゼクシィの調査によると、海外挙式の申し込み先を決めるのに最も役立った情報源として「旅行会社のカウンター」を挙げたカップルが16.5%。「プロデュース会社」は10.1%に留まりました。これは旅行代理店が、提携する複数のプロデュース会社の結婚式場に送客できるだけでなく、航空券やホテルの宿泊、ハネムーンツアーまでトータルで手配できるためです。

プロデュース会社は旅行代理店が企画した婚礼客の受け皿となってしまい、ウエディングドレスやブライダルフォトなどの利益率の高い商品を売り込むことができなくなってしまいました。海外ウエディング市場はシェアの取り合いが激しかった上、旅行代理店が有利になったのです。

プロデュース会社は企画力やノウハウ、知識で代理店と差別化を図ろうとしましたが、ウエディングプランナーが同行できない海外ウエディングの企画力には限界がありました。

新型コロナウイルス感染拡大前からグッドラックの業績は厳しい状態が続いていました。2019年12月期には売上が減少に転じています。

■グッドラック・コーポレーション業績推移(百万円)

2017年12月期2018年12月期2019年12月期
売上高10,89011,20211,107
営業利益601379▲245
純利益228159▲548

※テイクアンドギヴ・ニーズ「連結子会社の異動」より

グッドラックは新型コロナウイルスの影響により、9-12月期で16億円程度の経常損失を計上する模様です。そのため、テイクアンドギヴ・ニーズはグッドラック譲渡の特別損失として16億円を計上しますが、見込みの損失16億円が売却によって相殺されるとし、連結業績予想は据え置きました。なお、T&Gは2021年3月期の経常損失を125億~155億、純損失を130億~165億と予想しています。