新型コロナウイルス感染症拡大によって、2020年の外食・フードサービス業界は大打撃を受けた。4月の緊急事態宣言をはじめ、その後の第2波、第3波の感染症拡大のたびに外出の自粛や営業時間の短縮などが求められたことから、赤字に転落する企業が続出した。

M&Aにも新型コロナウイルスの影がくっきりと現れており、2020年12月22日までのM&Aの発表件数は前年(30件)の半分ほどの17件に減少し、取引金額は前年(約419億円)の4割ほどの約170億円に縮小した。

ペッパーフードサービス、経営再建で事業売却

そうした中、ひときわ目を引いたのが「いきなり!ステーキ」事業を主力とするペッパーフードサービスが7月3日に、もう一つの経営の柱であるペッパーランチ事業を、投資ファンドのJ-STAR(東京都千代田区)に85億円で売却すると発表した案件。

ペッパーフードサービスは、いきなり!ステーキ事業の急激な出店に伴う同一エリア内での競合などにより業績不振に陥っていたところにコロナ禍が直撃し、業績悪化が一気に進んだ。

同社では2020年1月に第三者割当増資で約69億円を調達したほか、同年6月には村上真之助氏(エスフーズ代表取締役)から20億円の借り入れを行うなど再建に取り組んだが、コロナ禍には抗えず、さらなる財務体質の強化のため、堅調に推移していたペッパーランチ事業の売却に踏み切った。

事業売却と併せて、いきなり!ステーキを中心に114店舗を閉店し、200人の希望退職者を募るなどの経営再建策も同時に進めた。

もう一つ目を引いたのがペッパーフードサービスの発表から6日後の7月9日に、居酒屋「甘太郎」「北海道」などを展開するコロワイドが、定食「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングス(HD)をTOB株式公開買い付け)で、子会社化すると発表した案件。

コロワイドは2019年10月に大戸屋HDの創業家から株式を取得して筆頭株主となったあと、大戸屋HDに食材の仕込みや加工を工場で行うセントラルキッチン方式の導入などを提案したが、大戸屋HDが受け入れを拒否。さらにコロワイドは6月末の大戸屋HDの株主総会で同社経営陣を刷新する株主提案を行ったが、こちらも否決された。

このため、コロワイドがTOBで株式32.16%を追加取得して所有割合を51.32%に高め、経営権を掌握することを決断。これに対し、大戸屋HDは7月20日に、コロワイドのTOBに対して反対を表明し、敵対的TOBに発展した。

その後コロワイドは8月末に、買付予定数の下限を5%引き下げて40%(上限は51%のまま)とし、買付期間も延長した結果、TOBが成立しコロワイド側が勝利した。

コロナ後を見据えた積極的な買収も

コロナ後に目を向けた積極的なM&Aもあった。うどん、そば、洋食などを手がけるグルメ杵屋は4月に、ラーメン・中華料理店などの35店舗(2020年3月末時点)を運営する雪村(茨城県土浦市)とセントラルキッチン運営のゆきむら亭エフシー本部(同)の両社を子会社化した。

グルメ杵屋は2018年10月に茨城県北部を中心にラーメン店などを展開する壱番亭本部(茨城県筑西市)を子会社化しており、今回の雪村のグループ入りで関東東部地域での地盤強化につなげる。

しゃぶしゃぶの木曽路は11月に、千葉県を中心に焼肉店30数店を運営する大将軍(千葉市)を子会社化すると発表した。新型コロナウイルスの影響で2021年3月期は赤字転落が避けられない見通しだが、しゃぶしゃぶに次ぐ新しい経営の柱として焼肉事業を育成するために同社初となるM&Aに踏み切った。

外食・フードサービス業界の主なM&A(2020年12月22日時点)

  案件内容 取引金額
1 ペッパーフードサービス、ペッパーランチ事業を投資ファンドのJ-STARに譲渡 85億円
2 コロワイド、大戸屋ホールディングスをTOBで子会社化 71億7800万円
3 KDDI、宅配水事業を富士山の銘水に譲渡 10億9900万円
4 あさくま、都内で寿司・和食店を運営する竹若を子会社化 1億5000万円
5 クレアホールディングス、飲食・美容機器事業子会社のアルトルイズムを経営陣に譲渡 1億4700万円
6 石垣食品、外食運営子会社のエムアンドオペレーションを経営陣に譲渡 600万円
7 グルメ杵屋、茨城県でラーメン・中華料理を展開する雪村を子会社化 非公表
8 木曽路、焼肉店を首都圏で展開する大将軍を子会社化 非公表


文:M&A Online編集部