3年連続で過去最多を更新 2020年のIT・ソフトウエア業界のM&A 

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東京都港区のNEC本社ビル

コロナ禍の中、2020年のIT・ソフトウエア業界のM&Aは活発に推移した。デジタル技術によって業務やビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が底流にあり、コロナ禍を打ち消した格好だ。

2020年12月21日までのIT・ソフトウエア業界のM&A発表件数は148件で、過去10年間では2018年、2019年に続いて3年連続で最多を更新したほか、全業種のM&A822件(2020年12月21日時点)の18%を占めた。

取引金額は半数が非公表で、金額公表案件のうち10億円以下が71%ほどを占めるなど、小型の案件が多かった。その一方で、全業種M&Aの6位に食い込む大型案件もあるなど、大から小までバラエティに富んだ1年となった。

外国企業が売買にかかわるクロスボーダーは14件(クロスボーダー率は9.5%)で、前年(22件)の63%ほどに減少し、全クロスボーダー(143件)に占める割合は9.8%と1割にも満たなかった。

コロナ禍で海外のM&A市場が冷え込んだことから、クロスボーダー案件が前年(196件)より大幅に減少したのが主要因だが、クロスボーダー率が全業種平均(17.4%)よりも低いことから、IT・ソフトウエア業界がグローバル展開よりも国内での事業基盤強化を優先している状況がうかがわれた。

NEC、金融DX 強化に2380億円

2020年のIT・ソフトウエア業界で取引金額が最も多かったのは、NECがスイスの大手金融ソフトウエア企業のアバロック(Avaloq)・グループを買収すると発表した案件。世界規模で進展する金融DX領域の事業強化につなげるのが狙いで、同社を傘下に置くオランダの持ち株会社の全株式を2021年4月までに約2380億円で取得する。

アバロックは金融資産管理向けソフトウエアで欧州やアジア太平洋地域で高いシェアを持ち、顧客は世界30カ国150 社を超えるという。

金融業界のデジタル化はデジタル経済社会の持続可能な発展に幅広い影響を及ぼすと見られており、NECはアバロックの買収により、デジタルファイナンス領域のソフトウエアの知識を獲得しNECが強みとする生体認証、AI(人工知能)技術、ブロックチェーン(分散型台帳)技術などを組み合わせ、新たな金融サービスの開発を目指す。

金額の2番目は投資ファンドのインテグラル(東京都千代田区)が、傘下企業を通じてシステム構築・開発支援を手がける豆蔵ホールディングスに対するTOB株式公開買い付け)を実施し非公開化すると発表した案件。MBO(経営陣による買収)の一環で、買付代金は最大約344億円。

金額の3番目は投資会社のアント・キャピタル・パートナーズ(東京都千代田区)が、スカラ傘下で営業支援サービスを提供するソフトブレーンをTOBなどで完全子会社化すると発表した案件。TOBの買付代金は約127億円で、TOB成立後にソフトブレーンがスカラ所有の全株式を約105億円で自己株取得するため、合計の取引金額は約232億円に達する。

サン電子、世界企業の地歩固め

クロスボーダーで金額が最も多かったのはNECによるアバロックの買収で、2番目はサン電子がイスラエル子会社を通じて、サイバー攻撃発生時などに電子機器に残されたデジタル証拠を収集・分析するデジタルフォレンジック事業を手がける米ブラックバッグ・テクノロジーズの全株式を取得すると発表した案件だった。

サン電子は約38億円を投じて、米国の有力企業を傘下に取り込み、世界的なリーディングカンパニーとしての地歩を固める。

IT・ソフトウエア業界の2020年のM&A取引金額上位10件(2020年12月21日時点)

1 NEC、スイスの大手金融ソフト企業アバロックを買収 2380億円
2 インテグラル、システム構築の豆蔵ホールディングスをMBOで非公開化 344億円
3 アント・キャピタル・パートナーズ、ソフトブレーンをTOBなどで子会社化 232億円
4 サン電子、デジタル証拠を収集分析する米ブラックバッグ・テクノロジーズを子会社化 38億円
5 SHIFT、ERPシステム導入・保守業務のホープスを子会社化 30億円
6 TIS、モバイル決済ソフト開発の米Sequent Softwareを子会社化 28億円
7 バンダイナムコHD、カナダの家庭用ゲームコンテンツ制作会社を子会社化 18億円
8 TIS、タイのIT企業のMFECをTOBで子会社化 18億円
9 電算システム、情報セキュリティー製品輸入販売のピーエスアイを子会社化 17億円
10 SHIFT、サイト制作のナディアとアプリ開発のxbsを子会社化 17億円

※億円未満は切り捨て

文:M&A Online編集部

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