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緊急事態宣言後の飲食チェーン、勝者が実施している秘策は?
緊急事態宣言が解除され、県をまたいでの移動も緩和されました。一部観光地やショッピング街に人が戻り始め、リベンジ消費が始まろうとしています。2月から冷え込み始めた飲食店に、遅い春がやってきました。売上の戻りが早い業態にはどんな特徴が?
スシローグローバルホールディングス(HD)<3563>と、くら寿司<2695>の回転寿司大手2社の決算が出そろい、両社の業績に明暗がくっきりと表れた。
くら寿司が当期赤字に転落したのに対し、スシローグローバルHDは減益ながら営業、税引き前、当期の全段階で黒字を確保した。今期の業績見通しも、くら寿司が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で「未定」としたのに対し、スシローグローバルHDは利益の全段階で前年度比40%-60%もの増益を見込む。何が両社の明暗を分けたのだろうか。
スシローグローバルHDの2020年9月期の売上高は2049億5700万円で、前年度比2.9%の増収となった。くら寿司の2020年10月期の売上高は前年度比0.2%減の1358億3500万円でほぼ前年並みとなった。
コロナ禍で売り上げが大きく落ち込む企業が多い中、国民食ともいえる寿司を扱う両社だけに、ともに消費者の支持はしっかりと獲得しているようだ。
大きな違いが生じるのは損益。スシローグローバルHDの2020年9月期は、営業利益が120億6100万円(前年度比17.1%減)、税引き前利益が105億3600万円(同26.6%減)、当期利益が64億5700万円(同35.2%減)と、いずれも2、30%の減益となった。
一方のくら寿司の2020年10月期は、営業利益が3億5000万円(同93.6%減)、経常利益が11億3500万円(同81.5%減)と8、90%の大幅減益となった。さらに当期損益は2億6200万円の赤字に転落した。
両社の損益計算書を見ると、寿司ネタなどの商品を仕入れる際にかかる費用である売上原価率はさほど変わらず、粗利益率はスシローグローバルHDの52.6%に対し、くら寿司は55.2%。この段階ではくら寿司の方が、わずかだがスシローグローバルHDよりも儲かっていることが分かる。
ポイントは販売費と一般管理費のいわゆる販管費。販売費は寿司を販売するのにかかった費用で、店員の給与や、広告宣伝費、運送費などが含まれ、一般管理費には会社全体を管理するのに必要な役員報酬や管理部門の給与、通信費などが含まれる。
売上高に占める販管費の割合を見ると、スシローグローバルHDの46.1%に対し、くら寿司は54.9%と8.8ポイントも高い。粗利益から販管費などを差し引いた残りが営業利益であり、販管費の多寡によって利益に大きな差が生じていることが分かる。
【スシローグローバルHDの業績推移】単位:億円、2021年9月期は見込み
2019年9月期 | 2020年9月期 | 2021年9月期 | |
売上高 | 1990.88 | 2049.57 | 2506 |
営業利益 | 145.46 | 120.61 | 173 |
税引き前利益 | 143.63 | 105.36 | 163 |
当期利益 | 99.59 | 64.57 | 105 |
【くら寿司の業績推移】単位:億円
2019年10月期 | 2020年10月期 | 2021年10月期 | |
売上高 | 1361.34 | 1358.35 | 未定 |
営業利益 | 54.75 | 3.5 | 未定 |
経常利益 | 61.35 | 11.35 | 未定 |
当期利益 | 37.66 | △2.62 | 未定 |
緊急事態宣言が解除され、県をまたいでの移動も緩和されました。一部観光地やショッピング街に人が戻り始め、リベンジ消費が始まろうとしています。2月から冷え込み始めた飲食店に、遅い春がやってきました。売上の戻りが早い業態にはどんな特徴が?