アプリで測定するのは従業員個人の幸福度なので、1人当たりの生産性の方が効果を見るのに適している可能性もある。日立の1人当たり営業利益は2018年3月までは緩やかな上昇傾向にあったが、200万円の壁を超えられず2019年3月期には減少に転じている。
日立の生産性推移 | ||||
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生産性(単位:円) | 一人当たり売上高 | 一人当たり営業利益 | 一人当たり経常利益 | 一人当たり当期利益 |
2011年3月期 | 25,752,414 | 1,228,788 | 1,194,767 | 660,324 |
2012年3月期 | 29,875,388 | 1,274,278 | 1,723,836 | 1,073,064 |
2013年3月期 | 27,712,944 | 1,293,612 | 1,056,084 | 537,414 |
2014年3月期 | 29,982,702 | 1,661,271 | 1,771,555 | 826,175 |
2015年3月期 | 29,034,158 | 1,434,517 | 1,541,551 | 645,980 |
2016年3月期 | 29,931,349 | 1,642,168 | 1,542,280 | 513,521 |
2017年3月期 | 30,150,233 | 1,781,856 | 1,543,636 | 761,010 |
2018年3月期 | 30,489,347 | 1,907,126 | 2,078,418 | 1,181,313 |
2019年3月期 | 32,035,504 | 1,752,674 | 1,745,287 | 751,994 |
2020年3月期 | 29,121,702 | 475,792 | 598,786 | 290,962 |
仮に開発元の日立が幸福度測定アプリを本格導入していたとしたら、社員の幸福度はともかく企業業績や1人当たりの生産性に大きな変化はなさそうだ。もちろん、日立がこのアプリを本格導入していないのかもしれないし(それはそれで、なぜ自社で本格採用しないのか不思議ではある)、本格的な自社導入が始まったばかりで効果が出るのはこれからなのかもしれない。
あるいは社員の幸福度が上がっても、外部環境や経営戦略がまずければ業績は向上しない可能性もある。「そもそも論」で言えば日立が主張するように「幸福度が上がるから業績が上がる」のか、それとも「業績が上がるから幸福度が上がる」のか、どちらが先なのかは判然としない。
働き方改革や社内環境を改善するために社員の幸福度測定アプリを導入するのも悪くはないが、業績を向上させる手段として幸福度測定を利用しようとするのは時期尚早だろう。業種や仕事の内容によって効果の違いがあるかもしれない。期待は「ほどほどに」だ。
文:M&A Online編集部
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