JXTGホールディングス(HD)から改称し、「ENEOSホールディングス」が6月25日にスタートする。持ち株会社の運営体制を変更するのに合わせた社名変更だが、業界の盟主・旧日本石油を中心とする20年に及ぶ再編・統合劇の総仕上げをも意味する。

持ち株会社と中核子会社を実質的に統合へ

JXTG HDは2017年4月、JXホールディングと東燃ゼネラル石油が合併して発足。同社は持ち株会社として傘下に、石油元売り最大手のJXTGエネルギーをはじめ、JX金属、JX石油開発の中核3子会社を置く。社名変更は、これまでの持ち株会社を頂点とするグループの運営を見直し、JXTGエネルギーを中心に据えた体制に移行するのを受けて行われる。

10兆円を超える連結売上高の約85%を占めるJXTGエネルギーと持ち株会社の経営を実質的に統合するもので、前者が「ENEOS」、後者が「ENEOSホールディングス」を名乗る。具体的には、両社の役員の大半を兼任させ、意思決定機関を集約し、事実上、一つの事業持ち株会社として一体運営する。意思決定と業務執行の迅速化を図るのがうたい文句だ。

ENEOS HDは引き続き法人格が残るが、純粋持ち株会社としての役割が限られることから、早晩、子会社のENEOSが吸収する公算が大きい。一方、JX石油開発、JX金属は社名変更せず、大幅な権限移譲を進めるとしている。

ENEOSは実は旧日本石油そのものでもある。ENEOSがサービスステーション(SS)の新ブランドとして誕生した2001年といえば、「日石三菱」時代。その2年前に日本石油と三菱石油が合併して発足したのが日石三菱だが、ブランド制定翌年の2002年には「新日本石油」として再スタートした。

その後、2010年に新日鉱ホールディングス(日本鉱業と共同石油を母体とし、傘下にジャパンエナジーなど)、2017年に東燃ゼネラル石油と相次ぎ合併してきたが、こうした経営統合を主導してきたのはいうまでもなく旧日石の流れだ。

6月25日をもって、「JXTGグループ」から「ENEOSグループ」へ(東京・大手町の本社前)

日本石油を源流とする「ENEOS」ブランド

精製・販売を手がける石油元売り業界は1980年代まで10数社がひしめき、過当競争を繰り広げた。それが現在では、ENEOS、出光興産(2019年4月に昭和シェル石油を統合)、コスモエネルギーホールディングス(大協石油、丸善石油が母体)の3グループに集約された。

一連の合従連衡で最も勢力を拡大したのがENEOS陣営だ。国内石油販売シェアの5割を握る。旧東燃系の「ゼネラル」「エッソ」「モービル」の各ブランドも、昨年までにENEOSに一本化を完了。こうしてみると、旧日石を源流とするENEOSを社名に冠することは当然の帰着だったといえる。

新生ENEOSは「アジアを代表するエネルギー、素材企業グループ」を旗印に掲げる。にもかかわらず、石油・天然ガス開発のJX石油開発、銅など金属事業のJX金属の2中核子会社については、なぜ、ENEOSへの社名変更を見送ったのか疑問符がつく。

旧日本鉱業を母体とするJX金属の売上高は1兆円を超え、石油事業と一線を画す同社はかねて独立志向がおう盛とされてきた。ENEOS体制への移行に伴い、グループからの離脱論もささやかれるのも、このためだ。

コロナ禍、赤字からのスタート

コロナ感染の影響下、足元の業績は揺らいでおり、前途は多難だ。2020年3月期は1879億円の最終赤字(前期は3223億円の黒字)を計上した。赤字転落は2017年にJXTG HDが発足して初めて。

2021年3月期もコロナ感染のダメージを織り込み、売上高は26.7%減の7兆3400億円、営業利益1100億円、最終利益400億円を予想する。コスト削減などで黒字回復を見込むものの、売上高は10兆円台を大きく割り込む。中長期的には、EV(電気自動車)の普及、再生可能エネルギーの台頭など、脱石油対応も急務だ。

ENEOS HD発足と同時に社長も交代する。子会社のENEOSエネルギー(現JXTGエネルギー)の大田勝幸社長が兼務する。現JXTG HD社長で実力者の杉森務氏はENEOS HD会長兼グループCEOに就く。

社名変更は4月1日とか、7月1日といった具合に、きりの良い日が選ばれるのが一般的だが、今回のケースは6月25日付。同日の定時株主総会で承認を得られ次第、即日、新生ENEOSの第一歩を踏み出すあたり、並々ならぬ意気込みが伝わる。

文:M&A Online編集部