日立製作所<6501>が2020年6月29日、社員の「幸福度」を測定するアプリケーションサービスを提供する新会社「ハピネスプラネット」を7月20日に設立すると発表した。資本金は9億9000万円で、立ち上げ時の従業員は10人。

体の動きで「本音」を探る

新会社が提供するアプリの目玉は、スマートフォンに搭載されている加速度センサーを利用し、社員の幸福度を「ハピネス関係度」として数値化する機能だ。相手に対する共感や信頼、不信や拒絶を示す体の動きを検知し、10年以上かけて延べ1000万日を超える行動データをもとにハピネス関係度を算出するという。

商用サービスに先立ち、2018年から「働き方フェス」と呼ばれるユーザー参加型の実証実験を4回実施し、83社の延べ約4300人が参加した。その結果、ハピネス関係度の高い組織では、コールセンターの法人営業で受注業績が3割程度高いことが実証されたほか、わずか3週間の利用で営業利益を1割増やすことに相当する効果もみえたという。

行動心理学的なアプローチだが、果たしてアプリに効果はあるのか? 実証実験に参加する企業は当然、人間関係が円滑でパフォーマンスの高い集団を参加させているだろうし、「アプリを導入すれば社員の幸福度が上がり、企業業績が向上する」と期待していいものか?

ハピネスプラネットは日立の社内研究から始まっており、2018年の実証実験以前に収集したデータの多くは日立グループで収集したはずだ。同社も「自社の法人営業26部署で従業員600人にアプリを4カ月運用したところ、非運用のチームと翌四半期の受注達成率で27%もの差がついた」ことを明らかにしている。ならば、この10年間の日立の業績がハピネスプラネットの研究成果と何らかの相関関係があるのではないか?

この10年間の業績をみると、売上高は2016年3月期の10兆343億円をピークに伸び悩んでいる印象だ。これは同社が「選択と集中」に取り組んだ結果とも言えるので、一概に「マイナス」とは評価できない。注目すべきは幸福度を測定するアプリの導入により「増加効果があった」とされる営業利益だ。2020年3月期は第4四半期に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響があったと考えられるため除外すると、2014年3月期以降の営業利益は5000億円台で推移しており、多少の増加傾向はみられるが6000億円台手前で伸び悩んでいる印象だ。

日立の業績推移
決算期(単位:億円)売上高営業利益経常利益当期利益
2011年3月期93,1584,4454,3222,389
2012年3月期96,6594,1235,5773,472
2013年3月期90,4114,2203,4451,753
2014年3月期96,1625,3285,6822,650
2015年3月期97,7494,8305,1902,175
2016年3月期100,3435,5055,1701,722
2017年3月期91,6235,4154,6912,313
2018年3月期93,6865,8606,3863,630
2019年3月期94,8065,1875,1652,225
2020年3月期87,6731,4321,803876