新型コロナウイルス感染症治療薬として期待を集めている富士フイルム富山化学(東京都中央区)が開発した「アビガン」と、米国ギリアド・サイエンシズ(カリフォルニア州)が開発した「レムデシビル」の明暗がはっきりとしてきた。 

ギリアド・サイエンシズは6月2日に、中等症入院患者を対象としたレムデシビルの第3相試験の結果を発表し、レムデシビルを5日間投与した患者は、レムデシビルを投与せずに標準的な治療を行った患者よりも症状の改善した患者の割合が65%高かったことを明らかにした。 

また副作用に患者がどれだけ耐えられるかの程度を表す忍容性については「概ね良好だった」とし、副作用が吐き気や下痢、頭痛などにとどまったことも公表した。 

一方、アビガンは新型コロナウイルス感染症の治療薬として2020年5月中の承認を目指していたが、有効性が確認できないとして承認が見送られた。さらに胎児に奇形が起こる危険性があるため、妊婦中や妊娠している可能性のある人には投与できないほか、アビガンが精液中に移行するため、妊娠する可能性がある場合は避妊する必要があるなどの問題も抱える。 

治療薬と並び新型コロナウイルス終息の切り札となるワクチンについては、日本製が2021年早々にも実用化されそうな見通しにあるが、治療薬については当面、米国頼みになりそうだ。 

レムデシビルに症状改善効果 

ギリアド・サイエンシズは「今回得られた結果は中等症の患者に対してレムデシビルを 5 日間投与すると、標準治療のみの場合よりも高い臨床的改善効果が得られることを示すもので、レムデシビルの有用性を示すこれまでに発表した試験結果にさらなるエビデンスを加えるものとなった」としている。 

さらに同社では米国のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の感染症専門医でハーバード大学医学部准教授のフランシスコ・マーティ医師による「疾患の早い段階で治療介入を行い、本剤を5日間投与すれば、臨床転帰(治療結果)が著しく改善する可能性があることが明らかにされた」とのコメントも掲載した。 

今回の結果を踏まえ、ギリアド・サイエンシズは疾患のより早い段階での投与や重篤患者への他の治療法との併用療法の検討、小児を対象とした試験などを進めていく方針という。 

アビガンの増産体制は着々 

一方のアビガンについては、備蓄量を200万人分にまで拡大するとの日本政府の決定を受け、富士フイルム富山化学が2020年7月に月間約10万人分、同年9月には同約30万人分の生産体制を構築する計画。 

化学品メーカーのデンカ<4061>が、アビガンの原料となるマロン酸ジエチルの出荷を6月1日から始めるなど、アビガン増産のための協力体制も整いつつある。 

また、臨床試験で効果が認められたとして、ロシアが新型コロナウイルス感染症治療薬として、アビガンのジェネリック(後発医薬品)に暫定承認を与えたことなども伝えられている。 

ただ日本では治療薬としての承認のめどは立っていないのが実情で、今後の臨床試験の結果が注目される。

文:M&A Online編集部