新型コロナの影響下、RIZAPグループがもがいている。2020年3月期決算は2年連続の営業・最終赤字となった。瀬戸健社長は「創業者、経営トップとして、覚悟を決めてコロナ危機を乗り切る。コロナ(の危機)が明けたときに、強い強い会社として生まれ変わりたい」と決意を語った。
10日に発表した 2020年3月期(国際会計基準)は売上高3.8%減の2029億円、営業赤字7億5200万円(前期83億円の赤字)、最終赤字60億4600万円(同194億円の赤字)。事業構造改革を進め、1年で赤字脱却を公約していたが、これを阻んだのが年明け後の新型コロナ感染の直撃だ。
実際、第3四半期(2019年4月~12月)まではほぼ計画通りに業績改善が進んでいた。売上高は計画を多少下回っていたものの、本業の儲けを示す営業利益は43億円と通期予想の32億円を上回り、黒字復帰に確かな手応えを得ていた。
外出自粛や店舗休業、営業時間短縮などで売上高が減ったうえ、傘下のフィットネスジム、小売店を中心とする固定資産の減損損失や商品在庫の評価減など約59億円を計上した結果、営業赤字が続くことになった。ただ、それでも赤字幅は前期に比べて約75億円縮小し、構造改革の進展をうかがわせる。
RIZAPは上場、非上場を合わせて約80社の子会社を抱える。積極的な企業買収を成長の原動力としてきたが、買収した子会社の業績不振が重なり、2018年10月にM&Aの凍結を宣言し、構造改革に着手した。
2020年3月期中に、4件の赤字子会社・事業の売却に取り組んだ。昨年12月には上場子会社として初めて、無料情報誌大手のぱどを売却した。売却金額は約25億円。また上場子会社8社中、営業赤字は夢展望、堀田丸正の2社(前期は、ぱどを含めて4社)だけとなった。
◎2020年3月期:上場子会社8社の業績(単位 億円)
社名 | 売上高 | 営業利益 |
MRKホールディングス | 189 | 7.5 |
ジーンズメイト | 77.6 | 0.28 |
イデアインターナショナル※ | 112 | 2.1 |
HAPiNS | 83.2 | 0.12 |
ワンダーコーポレーション | 612 | 12 |
夢展望 | 78.7 | △0.71 |
堀田丸正 | 55.4 | △2.0 |
SDエンターテインメント | 46 | 1.7 |
※イデアは6月期決算のため、2019年7月~20年3月の数値
本来であれば、2021年3月期は一連の構造改革の総仕上げとなるはずだったが、コロナ感染による危機対応が最優先となった。4月スタートを予定していた中期経営計画の発表も延期を決めた。
6月に始動したのが緊急経営対策だ。コストの最適化と新たな収益源の創出を2本柱とし、「改革加速のチャンスにする」(瀬戸社長)と意気込む。
グループ各社の本社機能の共通化、調達・購買機能の統合などでコスト削減を進めるとともに、オンラインによる非対面型事業の開発を急ぐ。在宅ワークを基本として本社事務所(東京・北新宿)のスペースも半分にする方針だ。
中核事業であるフィットネスジムの入会者数は3月が前年比57%減、4月89%減、5月94%減まで落ち込んだ。5月25日の緊急事態宣言解除後は感染拡大前の2月水準まで回復しているという。
注目されるのはマンツーマン指導が基本のジムで今後、どういった非対面型事業を生み出せるかだ。すでに個人向けのオンラインレッスンや法人向けにEラーニングを始めているが、急場しのぎの感は否めない。ウィズコロナ時代を見据え、新たなビジネスモデルを打ち立てることが急務になる。
2021年3月期業績の予想は困難とし、新型コロナ収束後に発表する予定だ。
文:M&A Online編集部
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