新型コロナウイルス感染症の治療薬レムデシビルの製造、供給を手がける米国の大手バイオ医薬品メーカーのギリアド・サイエンシズ(カリフォルニア州)は、がん免疫治療薬の開発に取り組んでいる米国のバイオベンチャー・ピオニール・イミュノセラピューティクス(カリフォルニア州)の買収に乗り出した。 

2億7500万ドル(約300億円)でピオニール株式の49.9%と、残る同社株式を買い取る権利を取得し、開発中のがん免疫治療薬候補物質(PY314、PY159)の第Ⅰ相臨床試験完了後に、3億1500万ドル(約340億円)を投じ残りの株式を取得する。 

さらに候補物質の臨床試験や、進行中の研究開発プログラムにも資金提供するほか、開発が順調に進めば目標達成報奨金として最高11億5000万ドル(約1240億円)を支払う。

ギリアドは、日本で初めての新型コロナウイルス感染症治療薬として承認を得ているレムデシビルの増産に力を入れており、2020年末までに増産のための投資額は10億ドル(約1080億円)を超える見込みで、2021年以降もこの取り組みを継続する予定という。 

ギリアドは7月から、これまで無償で提供してきたレムデシビルを有料化し、5日分の治療薬を患者一人当たり2340ドル(約25万円)で供給する。10万人に投与すれば約250億円になる。ギリアドの旺盛な資金需要をレムデシビルは支えることができるだろうか。 

近く臨床試験開始届けを提出 

ギリアドは従来、レムデシビルをはじめとする抗ウイルス分野を主力事業としてきたが、今回は次の成長事業として期待できるがん分野の拡充に乗り出した。 

ピオニールが手がける、がん免疫治療薬候補物質のPY314とPY159は非臨床試験で有効性を示しており、2020年第3四半期に新薬臨床試験開始届けをFDA(米国食品医薬品局)に提出する予定。 

ピオニールは新たな標的の発見や抗体薬創出の技術を用いて、次世代免疫療法の確立を目指しており、すでに腫瘍内微小環境のバランスを調整し、抗腫瘍免疫を向上させる技術を開発した。 

この技術を用いて作成したのが候補物質のPY314とPY159で、PY314は免疫抑制細胞を除去することで、PY159は抗腫瘍免疫を増強することで、がん治療を目指す。 

これら取り組みが評価され、ピオニールはNew Enterprise AssociatesやOrbiMedなどのベンチャー投資家から合計7800万ドル(約84億円)を調達しているという。 

ピオニールのスティーブン・P・ジェームズ社長兼CEO(最高経営責任者)は、ギリアドの出資について「今回の契約はピオニールの技術や薬剤候補物質の価値を明確にするもので、ギリアドがこの画期的な技術の有望性を認めてくれたことを嬉しく思う」とのコメントを発表している。 

PY314とPY159がレムデシビルのように収益化できる日はいつ訪れるだろうか。

文:M&A Online編集部