東京証券取引所は、「親会社を有する会社の上場に対する当取引所の考え方について」という文書を発信しています。一部を抜粋します。
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子会社上場には独自の弊害があることが指摘されています。例えば、親会社と子会社の他の株主の間には潜在的な利益相反の関係があると考えられますので、親会社により不利な事業調整や不利な条件による取引等を強いられる、資金需要のある親会社が子会社から調達資金を吸い上げる、上場後短期間で非公開化するなど、子会社の株主の権利や利益を損なう企業行動がとられるおそれが指摘されています。
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要するに、親子上場の子会社では少数株主が保護されない懸念が高く、株主の平等に反するということです。親会社の利益を優先させて少数株主の利益を損なうなら、確かに不特定多数の少数株主が想定される上場企業としてはふさわしくありません。
親子上場の問題点は少数株主の利益に関わるものだけではありません。2005年、堀江貴文氏率いるライブドアがニッポン放送を買収しようとする有名な事件が起こりました。そのターゲットはニッポン放送というよりも、ニッポン放送が当時子会社に持っていたフジテレビでした。
堀江氏自身の人物像もあってスキャンダラスな報道をずいぶんされましたが、企業防衛の観点からはフジテレビ側もずいぶん脇が甘い話です。ニッポン放送のほうがフジテレビより時価総額が小さければ買収ターゲットになるのは当然です。
2014年、長野日本放送という会社の株価が、1ヶ月で4倍に跳ね上がりました。長野日本放送は日清紡グループの子会社として親子上場しています。真実は分かりませんが、仕手戦に使われたと見るのが妥当でしょう。ただし、親子上場は解消に向かう、つまり親会社がそのうちTOBを行うと考えた投資家が大量に株を買い付けたと推測する人もいます。
親子上場の子の場合、多くの株式を親会社が押さえているため、市場に流通する株式がそもそも多くありません。このため少しの売買で株価が荒い値動きをしがちで、仕手戦には好んで使われてしまうと言われています。このように、投資という視点から見ても親子上場は歪みが生じがちです。