会社が取締役の債務を連帯保証する場合や、取締役が自己又は第三者のために会社と取引をする場合など、取締役と会社との利害が相反する取引を、「利益相反取引」という。
利益相反取引においては、取締役が自らの地位を利用して自己又は第三者の利益を図ろうとし、結果、会社が損害を受けるおそれがあることから、会社の利益を侵害することを防止するため、利益相反取引を行う場合は、取締役は、取締役会や株主総会等において当該取引を行うことについて承認を受けなければならない(会社法第356条・第365条・第595条)。
M&Aの場合においては、MBOの際にこの問題が典型的に表面化する。すなわち売り手企業の経営陣としては株主に対してより高く売却する機会を提供する義務を負っている一方で、買い手としての立場もあるため安く買収したいというインセンティブもはたらくため、本質的に利益相反を起こしている。
さらに経営陣は会社の内情を一般投資家よりも詳しく知りえる立場にあるため、情報格差がある。このような背景があるため、MBOに当たっては取引の公正性の確保が何よりも重要である。