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オール米国の報復を受ける東芝

※この記事は公開から1年以上経っています。
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最近、東芝と北朝鮮ばかり書いているようですが、また東芝です。

東芝は3月29日に米子会社・ウェスティングハウス(以下、WH)の米連邦破産法適用を申請しましたが、その日を境にオール米国の対応が大きく変わり、報復が矢継ぎ早に加えられています。

まず東芝がWHの連邦破産法適用を申請した先は、もちろん米国の裁判所です。裁判所もオール米国と考えると、東芝がこれでWHの損失負担が軽減される判断が下されると考えているなら「おめでたい」というしかありません。

WHはもちろん米国企業なので支援先選定にも対米外国投資委員会(CFIUS)の審査が必要であり、東芝に有利な支援先(外国企業)は出てきません。

もし本気でWHの損失負担を軽減するつもりなら、東芝本体を破産させて日本の裁判所と法律を含むオール日本で、オール米国と戦うしかありません。もちろん東芝の現経営陣にはそんな度胸はなく一見安直に見えるWHの破産法申請に走ってしまいました。

さらに4月4日付け「明確な上場廃止基準に抵触していた可能性のある東芝」に書いたように、監査法人のPwCあらた監査法人が東芝の2016年3月期決算に疑義を挟み、2016年10~12月期の決算も再々延期された期日の4月11日までに承認することはありません。

PwCあらた監査法人は英国が本部のプライスウォーターハウスクーパース(以下、PwC)傘下ですが、WHの監査はPwC米国法人が担当しているため、これもオール米国と考えると東芝に「やさしい」監査が行われるはずがありません。

2016年3月期が修正に追い込まれると2期連続債務超過で上場廃止となるはずですが、これは過年度決算の修正は遡及しないため上場廃止とはならないとのご指摘を頂きました。確かにオール日本で「東芝に最も過保護な東証」の見解はそのようで、さらに2016年10~12月期決算に監査法人の承認がなくても、すぐに上場廃止にはならないかもしれません。

ただオール米国のPwCあらた監査法人のままでは東芝にとってリスクがあまりにも大きく、即刻解任してしまうべきです。決算発表がさらに遅れますが、そこはオール日本の関東財務局と東証が何とかしてくれるはずです。

そして極めつけが4月6日、米国際貿易委員会(ITC)が東芝半導体事業のドル箱製品であるNAND型フラッシュメモリが、台湾の旺宏電子(マクロニクス)の特許を侵害しているとして調査を開始しました。

クロとなれば少なくとも米国では東芝製のNAND型フラッシュメモリが締め出されるため、分社化したばかりの半導体事業売却に大きな障害となります。

それ以前に日本政府は半導体事業売却に外為法の事前審査が必要としており(これだけなら正しい措置ですが、オール米国の意向も入っており実質的に米国企業グループに売却せざるを得なくなるはずです)、そこへオール米国のITCがクロと判定すれば(間違いなくそうなります)、いよいよ米国企業グループに「捨て値」で売却するしかなくなります。

ここにきて日本政策投資銀行、産業革新機構それにいくつかの日本企業が集まったオール日本で半導体事業の入札に参加する動きが出ています。ただその内容は5000億円程度で全体の3分の1強を取得し、それで経営のイニシアティブを確保しようという「とんでもなくおめでたいアイデア」でしかなく、オール米国でなくても相手にされません。

以前から本誌は、半導体事業は誰にでも(東芝の現経営陣にでも)売却できるので、何も急ぐ必要はないと主張していますが、こうなると冗談ではなく売却をいったん中止するべきです。ここまできたら東芝本体が消滅する事態も想定し、せめてオール日本で資産(半導体事業)の散逸を防ぐべきです。

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