【6月M&Aサマリー】前年比22件増の73件、キリンはミャンマー合弁の全株売却で合意

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キリンホールディングスの本社(東京・中野)

キリン、懸案のミャンマー合弁問題に決着

売却案件で注目されたのはキリンホールディングスだ。ミャンマー国軍系企業と合弁で運営するビール子会社のミャンマー・ブルワリー(MBL、ヤンゴン)の売却問題が決着することになった。昨年2月に起きた国軍によるクーデターを受け、早期の合弁解消とミャンマー撤退を模索してきたが、合弁会社側がキリンから自社株を買い取る形で最終的に合意した。売却金額は約224億円。売却時期は未定だが、早期実現を目指す。

MBLはミャンマー最大手のビール会社で、キリンは2015年に約700億円で子会社化した。出資構成はキリン側51%、国軍系企業49%。

第三者への株式売却はミャンマー政府など当局の承認が必要になるほか、会社清算の場合、現地従業員や取引先への影響が大きいことから、合弁会社への株式売却が最適な手段と判断した。

ビール会社としてはもう一つ、大型案件があった。サッポロホールディングスは米国のクラフトビールメーカー、ストーン・ブリューイング(カリフォルニア州)の全持ち分を約227億円で取得し、子会社化すると発表した。生産拠点の確保と新ブランドの獲得で米国でのビール事業を拡大する。

米国でクラフトビール会社を買収へ…サッポロホールディングス本社(東京・恵比寿)

東洋建設TOB、協議継続へ

任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(東京都港区)が海洋土木大手の東洋建設に対して6月下旬をめどにTOB(株式公開買い付け)を始めると「予告」していた一件は、ひとまず“水入り”となった。

東洋建設は株主総会前日の6月23日、大規模買付行為に対する対応方針にかかる議案を取り下げた。対応方針はヤマウチ側を念頭に置いた事実上の買収防衛策だったが、東洋建設は一転、買収防衛策を廃止したうえで、ヤマウチ側と協議を続けることになった。これらを受け、ヤマウチ側はTOBの開始時期について、東洋建設経営陣の同意を得たうえで9月下旬をめどとする方針を明らかにしている。

国内の砂糖市場が縮小する中、日新製糖と伊藤忠商事傘下の伊藤忠製糖(愛知県碧南市)は2023年1月に経営統合することで合意した。売上高規模は単純合計で約760億円。業界最大手のDM三井製糖ホールディングスとは2倍近く開きがあるものの、追撃体制がひとまず整う。

日新製糖は「カップ印」ブランドで知られ、国内小売市場で約26%のシェアを持つ。同社は2011年に新光製糖(ジャスダック上場)と経営統合しており、今回、再び再編劇の主役を務める。

◎6月M&A:金額上位(10億円以上)

1 積水ハウス 米国の戸建住宅会社チェスマー・グループを子会社化 687億円
2 関西ペイント アフリカの塗料子会社2社をオランダ化学大手アクゾノーベルに譲渡 585億円
3 浜松ホトニクス レーザー装置・部品製造のデンマークNKT Photonicsを子会社化 295億円
4 伊藤忠商事 大建工業との住宅構造材製造の米国合弁会社PWTに追加出資し子会社化 240億円
5 サッポロホールディングス クラフトビールメーカーの米国ストーン・ブリューイングを子会社化 227億円
6 キリンホールディングス ミャンマーのビール合弁子会社・ミャンマー・ブルワリー(MBL)の全保有株51%をMBLに譲渡(MBLが自己株式取得) 224億円
7 米コーンウォール 無線通信機器メーカーのユニデンホールディングスをTOBで非公開化 195億円
8 ディー・エヌ・エー レセプト(診療報酬明細書)データ分析のデータホライゾンをTOBと第三者割当増資引き受けで子会社化 103億円
9 パイプドHD 株式の非公開化に向けてMBOを再実施 95.8億円
10 H.U.グループホールディングス ベルギーのバイオテクノロジー企業ADxを子会社化 57.3億円
11 ケイブ スマホゲーム開発のでらゲー(東京都渋谷区)を子会社化 50.2億円
12 丸和運輸機関 物流業のM・Kロジ(福岡県宇美町)を子会社化 41.4億円
13 フェローテックホールディングス センサーメーカーの大泉製作所をTOBなどで子会社化 27.6億円
14 新日本科学 非臨床試験のイナリサーチをTOBで子会社化 26.9億円
15 フェローテックホールディングス 工業用刃物・カッター製造の東洋刃物をTOBで子会社化 21.5億円
16 バルカー フッ素樹脂製品製造の中国子会社を現地社に譲渡 13.6億円
17 ブレインパッド ITマーケティングサービスのTimeTechnologies(東京都千代田区)を子会社化 10.5億円

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文:M&A Online編集部

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