上場企業による子会社・事業の売却 2年連続で過去最多を更新

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写真はイメージです

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、人の移動や経済活動が制限されたことから、多くの企業で業績が悪化した。こうした状況の中、財務体質の強化や主力事業への資源の集中などの目的で、2021年(2021年1月1日~12月27日)に上場企業が子会社や事業を売却した案件が過去10年で最多となった。

前年の2020年も新型コロナウイルスによる景気低迷が要因の一つとなり、上場企業による子会社や事業の売却が急増しており、2年連続での過去最多更新となった。全M&Aに占める上場企業による子会社や事業の売却案件の割合は34.1%で、過去10年間で最も高い構成比となった前年(33.6%)を0.5ポイント上回った。

新型コロナウイルス変異株の感染拡大は依然として続いており、コロナ禍収束の見通しは立たず、2022年も上場企業による子会社や事業の売却案件は、高い水準で推移しそうだ。

IT・ソフトウエア業界が最多

2021年の上場企業による子会社や事業の売却案件は297件で、過去最高だった前年(285件)を12件上回った。合計の取引金額は3兆6071億円で、前年(4兆9460億円)には及ばす、こちらはこの10年では2番目の金額となった。1000億円を超える大型の案件が9件と多かったが、1兆円を超える案件がなかったため、前年よりも1兆3000億円ほど減少した。

売り手企業の業種を見ると、IT・ソフトウエア業界が40件で最も多く、全体の13.5%を占めた。次いで電気機器、その他サービス、化学、専門商社の順となった。一方、売却の対象となった企業の業種は、トップがその他サービスの50件で、全体の16.8%を占めた。次いでIT・ソフトウエア、化学、電機機器、専門商社の順となっており、売り手企業と同じような業種が上位を占めた。

金額トップは三菱UFJフィナンシャル・グループの8800億円

取引金額が最も高かったのは三菱UFJフィナンシャル・グループが、傘下の米地銀MUFGユニオンバンク(カリフォルニア州)の全株式を、米地銀最大手のUSバンコープ(ミネソタ州)に売却すると発表した案件で、売却金額は総額80億ドル(約8800億円)で、このうち55億ドルが現金。残りはUSバンコープの株式2.9%相当を受け取る。米市場で法人取引と投資銀行業務に経営資源を集中するのが目的だ。

金額の2番目は日立製作所が上場子会社の日立金属を売却すると発表した件。米投資ファンドのベインキャピタルが日立金属にTOB株式公開買い付け)を実施し、発行済み株式の47%をおよそ4300億円で買い付け、そのうえで日本産業パートナーズ(東京都千代田区)など日本の投資ファンド2社と組んで、親会社の日立が保有する残る53%の株式を約3800億円で取得する。日立はグループ事業の再編を進めており、前年は日立化成を昭和電工に売却した。

【上場企業による子会社・事業の売却金額上位10件(2021年1月1日~12月27日)】

順位 内容 売却金額
1 三菱UFJフィナンシャル・グループ、傘下の米地銀MUFGユニオンバンクをUSバンコープに売却 8800億円
2 日立製作所、日立金属を米ベインキャピタルなどに売却 3800億円
3 ブリヂストン、屋根材製造の米国子会社ファイアストン・ビルディング・プロダクツをスイス企業に売却 3500億円
4 ENEOSホールディングス、英資源開発子会社のJXNEPUKを現地社に売却 1900億円
5 資生堂、パーソナルケア事業を欧州投資ファンド大手のCVCキャピタル・パートナーズに売却 1600億円
6 住友金属鉱山、チリのシエラゴルダ銅鉱山の全権益を豪資源大手South32に売却 1349億円
7 武田薬品工業、2型糖尿病治療薬4製品の製造販売承認を帝人に売却 1330億円
8 JSR、エラストマー事業をENEOSホールディングスに売却 1150億円
9 ソニーグループ、米国子会社のゲーム部門GSN Gamesを米スコープリーに売却 1100億円
10 三菱ケミカルホールディングス、結晶質アルミナ繊維事業を米アポロ・グローバル・マネジメントに売却 850億円

文:M&A Online編集部

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