中国企業による日本企業の買収事例3:美的集団(マイディア・グループ)

中国企業のM&A戦略について、特に日本企業と関連する部分にスポットを当て紹介する。第3回は、東芝の子会社で、東芝ブランド製品の開発・製造・販売を行う白物家電の東芝ライフスタイル株式会社を買収した美的集団(マイディア・グループ)を取り上げる。

最近話題になることの多い東芝<6502>であるが、2016年、子会社である東芝ライフスタイル株式会社の発行済株式の80.1%を美的集団の香港子会社である「マイディア・インターナショナル・コーポレーション・カンパニー・リミテッド(Midea International Corporation Company Limited)」に譲渡した。東芝の白物家電事業は、中国・美的集団の傘下に入ることになった。

赤字が続いた東芝の白物家電事業を買収

東芝の冷蔵庫、洗濯機、エアコン、掃除機、炊飯器、電子レンジなど白物家電全般を扱う東芝ライフスタイルは、それまで赤字が続いていた。美的集団傘下に移行するにあたり、注目されていたのが「東芝ブランド」の存続であった。これについては、今後40年間にわたり東芝ブランドを継続使用するなどの提携関係を結んだことが発表された。

日本国内で販売される東芝製品は、美的(マイディア)の製品も含め「東芝ブランド」で展開される。また、開発から製造、販売、アフターサービスなどの体制も現状を継続し、東芝ライフスタイルが運営している。

美的集団(マイディア・グループ)とは?

美的集団は、空調や冷蔵庫などの一般家庭用家電機器をはじめとする総合家電メーカーである。全世界に約200の子会社があり、2016年の売上高は約2兆6000億円、約13万人の従業員を有する 

美的集団は、1968年に広東省仏山市で、前会長の何享健(ホー・シアンジェン)氏をはじめとする23名によって5000元で創業を開始した。1980年に家電業界に参入すると売上高は1990年に16億円、2000年に1600億円、2010年には1兆6000億円と着実に業績を伸ばしていった。

注:日本円売上金額は、現在のレートを使用(原文は、1990年1億元、2000年100億元、2010年1000億元)。美的集団(中国)のHPより

世界一の人口都市「珠江デルタ」で生まれた美的集団

このように順調に事業拡大してきた美的集団であるが、発祥地である仏山市は、「珠江(しゅこう)デルタ」に位置する。珠江デルタとは、中国広東省中南部の珠江河口地域のことを指し、東南アジアに近く、海陸の交通がよく、中国の南大門とも呼ばれている。

この地域には、広州市、深セン市、珠海市、中山市、東莞市、仏山市等が含まれ、香港やマカオにも近い。早い時期から経済特区となった深セン市をはじめとして、数多くの外国企業が進出し、世界有数の製造業の集積地となっている。

珠江デルタ地図
出典:香港貿易発展局HP 珠江デルタ地図より

実は、仏山市が属する広東省は、地域別の中国国内GNPで第1位の座を長年保っている地域である。そして、その広東省の中心が珠江デルタである。中国と言うと上海や北京の方が有名かもしれないが、実は中国の経済を支えているのは広東省であるといっても過言ではない。広東省は、地域ごとに決まっている最低賃金でも、上海に次いで、2番目に高い地域である。このような地域から美的集団は生まれ、その本社は現在も広東省仏山市にある。

美的集団傘下となった東芝ライフスタイルの戦略

東芝ライフスタイルは美的集団傘下となり、美的集団の部品調達規模の大きさと共通化によって、コストを大幅に下げることが可能であると考えていた。また、小型冷蔵庫や単機能の電子レンジなど、東芝が持っていなかった製品を新たに発売することでシェアを高め、利益を引き上げる方針を打ち出した。

実は、美的集団と東芝の関係は長く、1993年にエアコンでの技術協力、その後、コンプレッサーや電子レンジ分野でも提携し、信頼関係を築いてきた。東芝ライフスタイルとしては、この東芝ブランドの価値を世界に多くの生産拠点と販売網を持つ美的集団傘下で広めていくことを見据え、その販売チャンネルをフル活用するという方針であったと考えられている。

「美的集団」の家電
日本美的株式会社HP 製品情報ページより

黒字化した東芝ライフスタイルの今後

2017年5月、東芝ライフスタイルの石渡敏郎社長は、美的集団傘下に移行してから、2016年度下半期に黒字化を達成したと発表した。また、美的集団に移ってから製品開発においても、美的集団、東芝両社の白物家電におけるさまざまな技術を出し合って共同開発するため、開発のスピード自体が上がっていると、開発面でのシナジー効果を語っている。

東芝グループ傘下だった頃は、半導体事業や重電事業に重点をおいてきたため、白物家電事業の優先度は相対的に低くなっており、なかなか思うような投資を行えなかった。しかし、同じ白物家電の専業メーカーである美的集団においては、家電への投資が当たり前であり、美的集団に移ったことで、東芝ブランドの家電の開発を再び行えるようになった。

東芝ライフスタイルは、このまま順調に業績を回復していくのか。今後も美的集団傘下の東芝ブランドに注目していきたい。

文:M&A Online編集部