公開日:2017年06月20日

ジェフ・ベゾスがホールフーズを買収する意味

 本誌が新時代の錬金術師と考えるジェフ・ベゾス率いるアマゾン・ドットコム(以下、アマゾン)が6月16日、食品小売り大手のホールフーズ・マーケット(以下、ホールフーズ)を137億ドル(1兆5000億円)で買収すると発表しました。アマゾンにとっても過去最大の買収となります。

 この137億ドルには債務が4億ドルほど含まれますが、買収価格はホールフーズの前日終値を27%上回る42ドルで、アマゾンはすべて現金で支払います。アマゾンの3月末の現金残高は215億ドルでした。

 ホールフーズは1978年にテキサス州・オースティンで創業した高級・自然・有機食品がイメージの小売り大手で、米国を中心にカナダ、英国などで469店舗を展開しています。共同創業者のジョン・マッケイCEOはその職にとどまり、またホールフーズの社名も、オースティンにある本社もとりあえずはそのままのようです。

 ただホールフーズの最近の業績は伸び悩んでおり、本年初めには全世界で1200店舗という目標を棚上げし、若干の店舗閉鎖も行っていました。株価もここ2年ほどは30ドル前後で低迷し、マッケイCEOもアクティビストの攻撃対象となっていました。

 さてそんなホールフーズの買収を発表したアマゾンの株価は3%上昇し、時価総額がたった1日で140億ドルも増加しています。そういう比較をするものではありませんが、新時代の錬金術師であるジェフ・ベゾスはホールフーズの買収金額に相当する企業価値を、たった1日で「作り出した」ことになります。

 さてアマゾンがホールフーズを買収するメリットは、食品はアマゾンの主力販売商品とは違って消費者が「ほぼ毎日買うもの」であり、アマゾンのプライム会員向け生鮮食品宅配サービス・アマゾンフレッシュの拡大には劇的な効果があります。

 それ以外にも実店舗における仕入れ・販売、宅配、ネット注文品の実店舗での受け取り、店舗や倉庫を物流拠点にしたサービスの拡大が見込めるはずです。

 そんなことより1つだけ間違いがないと感じることは、ジェフ・ベゾスはホールフーズの現時点におけるサービス内容や消費者の評価や企業イメージなど全くお構いなしに、アッという間にホールフーズをアマゾンの事業拡大戦略に組みこんでしまうはずです。

 つまりベゾスは現時点のホールフーズに価値を見出したわけではなく、あくまでもアマゾンの拡大戦略のなかで「たまたまそこにあった」ホールフーズを買収したほうが、手間もコストも省けると考えただけだったはずです。

 これは日本企業がよく海外企業を買収した後に企業文化の違いなどに苦労するものですが、おそらく全く違ったスピードでホールフーズはアマゾンの一部となるはずで、そこは見ていて参考になるはずです。

 普通は巨額買収となると買収する企業の株価が下がるものですが、今回はアマゾンの株価が3%上昇しています。これは株式市場がその辺を感じ取っているからで、そこがベゾスは新時代の錬金術師であると考える理由です。

 また同日に小売り大手のウォルマートの株価が5%、クローガーに至っては11%も下落しています。