希望退職者の募集結果についての発表が連日続いている。今年に入って2カ月余りだが、その数は上場企業だけですでに20社近い。応募者が最多だったのは旅行大手の近畿日本ツーリストなどを傘下に持つKNT-CTホールディングスの1376人で、LIXILの965人、オリンパスの844人などが次ぐ。紳士服の青山商事、外食大手のロイヤルホールディングスでは応募人数が募集を5割以上も上回った。
2021年に入り、希望退職者募集の計画を発表した上場企業は17社あり、その大部分が現在募集中。下着訪問販売のシャルレ、映像事業のIMAGICA GROUPのようにすでに募集を終えたところが2社あるほか、製靴大手のリーガルコーポレーション(募集規模100人)、たばこ・食品のJT(同1150人)などは3月以降に募集を予定する。
これとは別に目下、発表が相次いでいるのが昨年中に希望退職者の募集計画を公表し、年明け1月から2月にかけて実施した企業の募集結果(募集期間が昨年末から今年にまたがるケースが一部あり)。3月2日時点で、少なくとも19社(シャルレ、IMAGICAを含む)を数える。
KNT-CTホールディングスは1月に人数を特に定めず募集したところ、応募者が1376人に上った。傘下の近畿日本ツーリストを中心に35歳以上の従業員(パート社員を含む)を主な対象とした。応募人員は約7000人の在籍人数のほぼ2割にあたる。
KNT-CTの2021年3月期業績予想は売上高が77%減の870億円、営業赤字355億円(前期は16億円の赤字)。新型コロナ禍で悪化した業績の立て直しに向け、会員組織による個人旅行のクラブツーリズム事業、首都圏での法人旅行事業を中核とする一方、個人・団体旅行事業は集約・縮小するなどの構造改革を進めており、希望退職もその一環だ。
LIXILは1200人、オリンパスは950人の規模で退職者を募ったが、LIXILは約2割、オリンパスは約1割それぞれ想定を下回った。
自動車ランプ大手のスタンレー電気では予定の300人程度に対し、応募が155人と半数だった。ピストンリング大手のリケンも応募は予定の3分の2の103人にとどまった。
逆に応募が予定数を5割超過したのは「洋服の青山」を展開する青山商事。400人程度の募集に609人が応募した。ビジネスウエアのカジュアル化が進展していたところに、コロナ禍による在宅勤務の広がりでスーツ需要がさらに落ち込んだ。
「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」などのロイヤルホールディングスでも募集200人程度に対して応募が1.5倍の315人に上った。同社は総合商社の双日に支援を求め、再建を進めることになった。
アパレル大手のTSIホールディングス、スポーツ用品大手のデサント、エレクトロニクス商社の丸文などでも応募が1割以上多かった。
今年に入り、各社が発表した希望退職者の募集結果を集計すると約6100人となる。新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せない中、希望退職者の募集を決断する動きは衰えを見せておらず、雇用情勢への懸念は高まるばかりだ。
◎2021年に入り、希望退職者の募集結果を発表した上場企業
企業名 | 応募人数 | 募集人数 |
KNT-CTホールディングス | 1376 | 定めず |
LIXIL | 965 | 1200 |
オリンパス | 844 | 950 |
青山商事 | 609 | 400 |
東芝(東芝デバイス&ストレージ) | 452 | ― |
TSIホールディングス | 351 | 300 |
ロイヤルホールディングス | 315 | 200 |
曙ブレーキ工業 | 233 | 180 |
スタンレー電気 | 155 | 300 |
デサント | 124 | 110 |
丸文 | 115 | 100 |
IMAGICA GROUP | 105 | 100 |
リケン | 103 | 150 |
三菱製鋼 | 98 | 100 |
竹田印刷 | 88 | 100 |
カシオ計算機 | 81 | 定めず |
キーコーヒー | 73 | 100 |
アマガサ | 13 | 10 |
シャルレ | 8 | 定めず |
文:M&A Online編集部
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