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2年後に復活を期す「吉野家」そのシナリオとは
2021年2月期に2年ぶりに最終赤字に転落する見込みの吉野家ホールディングスが、2年後の2023年2月期に復活の見通しを掲げている。 強気見通しの裏付けとなっている戦略はどのようなものなのか。
吉野家ホールディングス<9861>から「ステーキのどん」や「フォルクス」などを運営するアークミール(さいたま市)を買収した、焼肉の安楽亭<7562>が、安楽亭、アークミール両社の共同事業に乗り出した。
フォルクス豊洲店内に「安楽亭豊洲店」を、安楽亭赤羽東口店内に「フォルクス赤羽東口店」「ステーキのどん赤羽東口店」を、それぞれゴーストレストラン(キッチンとデリバリーだけの店舗)としてオープンするもので、メニューを相互に提供することでM&Aの相乗効果を高めるのが狙いだ。
コロナ禍の中、安楽亭の2021年3月期は大幅な赤字に陥る公算が大きいだけに、経営立て直し策としてゴーストレストランが果たす役割は小さくはなさそうだ。
安楽亭豊洲店では、焼肉カルビ弁当や、ビーフ100%ハンバーグ&焼肉カルビなど32品をUberEatsと出前館を活用して販売する。
フォルクス赤羽東口店ではフォルクスハンバーグ弁当や、チーズインハンバーグロコモコ風弁当など17品を、ステーキのどん赤羽東口店では、ハンバーグ弁当やフライドポテト、唐揚げなどのサイドメニューを含め12品を販売する。
安楽亭の店舗は2020年12月時点で168店舗、アークミールの店舗は同147店舗あり、このほかにも炭火焼肉の「七輪房」などの他業態の店舗が38店舗ある。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるデリバリーニーズの高まりとともに、ゴーストレストランの需要も高まりつつある状況を踏まえ、安楽亭では今回の取り組みを拡大していく計画で、今後全国でメニューの相互提供が実現しそうだ。
安楽亭は自社の焼肉とアークミールのステーキやしゃぶしゃぶが、食材や店舗運営などで相乗効果が見込めるとし、2020年2月にアークミールを子会社化した。
アークミールは原材料価格や人件費の上昇、消費者の節約志向の高まりなど厳しい経営環境に晒されており、2019年2月期の営業損益は9億3000万円の赤字だった。
安楽亭はアークミールを子会社化したことで売り上げが大きく伸びており、2021年3月期第3四半期の売上高は194億9100万円と前年同期に比べ66.6%もの増収となった。
ただ、損益は厳しい状況にあり、営業赤字は10億900万円に達した。安楽亭業態の営業利益は2200万円だったものの、アークミール業態が5億9500万円の営業赤字に陥ったのが足を引っ張った格好だ。
安楽亭は2021年3月期の業績予想をコロナ禍の影響で算定が困難として公表していないが、第3四半期の業績を見る限り、通期でも赤字は避けられそうにない。
ゴーストレストランでどこまで、盛り返すことができるだろうか。
【安楽亭の業績推移】単位:億円
2018年3月期 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期第3四半期 | |
売上高 | 169.47 | 163.42 | 153.44 | 194.91 |
営業損益 | 3.48 | 1.85 | 1.9 | △10.09 |
経常損益 | 3.2 | 1.26 | 1.9 | △9.16 |
当期損益 | 1.49 | △1.03 | △4.7 | △12.25 |
【安楽亭の2021年3月期第3四半期のセグメント業績】単位:億円
安楽亭 | 七輪房 | アークミール | その他 | |
売上高 | 75.17 | 13.66 | 103.72 | 2.35 |
セグメント損益 | 0.22 | △0.11 | △5.95 | △0.42 |
文:M&A Online編集部
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2021年2月期に2年ぶりに最終赤字に転落する見込みの吉野家ホールディングスが、2年後の2023年2月期に復活の見通しを掲げている。 強気見通しの裏付けとなっている戦略はどのようなものなのか。