流転する「京樽」、今度の親会社は「スシロー」に

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スシローの傘下に入る「京樽」(東京都内の店舗)

京樽(東京都中央区)といえば、持ち帰り(テイクアウト)寿司で抜群の知名度を持つ。京都発祥で、創業90年に及ぶ老舗だ。そんな業界の名門が回転寿司最大手のスシローグローバルホールディングス(HD)に4月1日付で買収されることになった。実は京樽が買収のターゲットになるのは今回が初めてではない。

吉野家HD、経営再建中の京樽を子会社化

現在の親会社は吉野家ホールディングス(HD)。京樽が吉野家の傘下に入ったのは1999年のこと。吉野家HD(当時吉野家ディー・アンド・シー)が会社更生法の適用を申請し経営再建中だった京樽の支援に乗り出し、第三者割当増資引き受けなどで50%超の株式を取得し、子会社化したのだ。

2011年には吉野家HDが株式交換により京樽を完全子会社化した。2000年代は吉野家HDがM&Aを活発化した時期にあたる。

讃岐うどんのはなまる、ラーメン一番本部(現アール・ワン)、ステーキ店のどん(後のアークミール。2020年3月に安楽亭に売却)などを次々に買収した。牛丼店「吉野家」にとどまらず、業態の多様化による事業基盤の強化を狙った。

吉野家HDが1月に発表した足元の2021年2月期連結業績予想は売上高20%減の1723億円、営業赤字87億円(前期は39億円の黒字)。新型コロナ禍が直撃し、営業赤字は過去最大となる見通しだ。

大黒柱の吉野家、はなまるに続く3本目の柱が京樽。2020年3月~11月期の部門売上高をみると、はなまるが152億円、京樽が136億円で、そろって前年同期比約35%減だが、今回、売却の白羽の矢が立ったのは京樽だった。

京都で創業、和食業界でいち早く株式公開

京樽は1932(昭和7)年に京都・河原町で割烹料理店として創業し、1952年に看板商品「茶きん鮨」と上方鮨の持ち帰り店「京樽」のチェーン化に乗り出した。1980年に和食業界でいち早く株式公開(店頭登録)し、84年には東証1部に上場した。

経営が暗転したのは1997年。会社更生法適用を申請し、行き詰まった。不動産投資を積極化したバブル期の後遺症や創業家の乱脈経営が重くのしかかったのだ。自力再建を断念したが、吉野家HDの傘下で、2005年にジャスダックに再上場を果たし、京樽復活ののろしを上げた。

京樽は持ち帰り店以外に、回転寿司「海鮮三崎港」、寿司専門店「すし三崎丸」などを手がけ、国内で北は宮城県から南は香川県まで17都府県に290店舗(1月末)を展開する。

新たに親会社となるスシローは回転寿司の首位。国内約590店舗(海外には約40店舗)を持つ。スシローは大阪発祥。持ち帰り需要を取り込むとともに、首都圏・関東圏での店舗網拡充につなげる考えだ。スシローは京樽の全株式を取得するが、買収金額は公表していない。

東京都心への進出を加速する「スシロー」(東京・秋葉原)

スシロー、かつてゼンショーの買収攻勢を上場廃止で対抗

スシローは前身のあきんどスシロー時代の2000年代初めに東証2部に上場したが、「はま寿司」を傘下に持つゼンショーホールディングスによる買収攻勢に対抗するため、2009年に株式を非公開化した苦い経験がある。東証1部に再上場したのは2017年のことだ。

スシローは4月1日に「FOOD&LIFE COMPANIES」に社名変更する予定で、そのタイミングに合わせて京樽をグループに迎える。京樽は2022年に創業90周年を控える。流転を重ねる同社の今後にどんな前途が待っているのだろうか。

文:M&A Online編集部

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