積極的なM&Aなどで成長してきた日本電産<6594>に陰りが出てきた。
同社は中期戦略目標 「Vision 2020」で、最終年となる2021年3月期に2兆円の売上高を目指していたが、2020年4月30日に発表した2020年3月期決算で2021年3月期の売上高が1兆5000億円にとどまる見通しを公表した。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済が長期間低迷するとみて、長年掲げてきた目標を修正した。
ただ、同社の永守重信会長CEO(最高経営責任者)は「M&Aにはいい環境になっている」としたうえで、大手系列の自動車部品メーカーの買収に意欲を示した。大型買収で一気に売上高を積み増せば、2兆円に近づく可能性はゼロではなさそうだ。
日本電産の2020年3月期は売上高が前年度比4.0%増の1兆5348億円、営業利益は同14.6%減の1103億2600万円、税引き前利益は同17.6%減の1069億2700万円、当期利益は同45.4%減の600億8400万円の増収減益となった。
売上高は為替の影響で約381億円の減収となったものの過去最高を更新した。一方、利益の方は為替の影響により約77億円の減益となったほか、需要が急拡大しているトラクションモータシステムなどの開発や生産立ち上げに伴う追加費用約140億円などが発生したため、営業利益、税引き前利益はともに2ケタの減益となった。
さらに当期利益はコンプレッサーメーカーのエンブラコの買収の条件となったコンプレッサー事業(セコップ社)の売却により発生した損失157億700万円を計上したため40%を超える減益となった。
2021年3月期は売上高が前年度比2.3%減の1兆5000億円、営業利益は同13.3%増の1250億円、税引き前利益は同16.9%増の1250億円、当期利益は同66.4%増の1000億円の見込み。
永守会長CEOは新型コロナウイルスの影響は「1年は続く」とし、目標の2兆円を5000億円も下回る厳しい数字を示した。「Vision 2020」では2021年3月期の営業利益率⽬標 を15%以上としていたが、こちらも8.3%と目標には届かない見込み。
新型コロナウイルスの感染拡大で日本電産の成長にストップがかかったことについて、永守会長CEOは「今の業績は居心地が悪い、居心地のいいのは10兆円企業」とし、今後もチャレンジし続ける姿勢を改めて強調した。
M&Aについても「必要なものはやっていく」とし、新型コロナウイルス感染拡大が終息した後もM&Aを成長戦略の一つに据えていく考えを示した。
【日本電産の業績推移】2021年3月期は予想
2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | |
売上高 | 1兆4754億3600万円 | 1兆5348億円 | 1兆5000億円 |
営業利益 | 1292億2200万円 | 1103億2600万円 | 1250億円 |
税引き前利益 | 1298億3000万円 | 1069億2700万円 | 1250億円 |
当期利益 | 1099億6000万円 | 600億8400万円 | 1000億円 |
文:M&A Online編集部
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