イオン<8267>が結婚相手紹介サービスを手がける子会社のツヴァイ(東京都中央区)を売却する。結婚相談所連盟事業や直営の結婚相談所事業などを手がけるIBJ<6071>が3月12日から実施していたツヴァイに対するTOB(株式公開買い付け)が成立し、4月30日にツヴァイの経営権がイオンからIBJに移る。
イオンによると、この子会社売却が2021年2月期の業績に与える影響は軽微という。確かに売却金額は20億円強と小さく、ツヴァイの2020年2月期の最終損益は4億4500万円赤字だが、さほど大きな額ではないことを考えると、6兆6000億円を超える売り上げを持つイオンにとっては軽微といえるだろう。
だが、イオンは新型コロナウイルス感染拡大による影響を読み切れないことから、2021年2月期の業績予想で、売上高は8兆円(前年度比7.0%減)-8兆4000億円(同2.4%減)、営業利益は500億円(同76.8%減)-1000億円(同53.6%減)と幅を持たせた。経常利益、当期利益については未定としており、営業利益を上回る大幅な減益や赤字転落も予想される。
ツヴァイが業績に与える影響は確かに軽微だが、イオンは「主要な改革の1つにグループ事業構造の改革を掲げ、事業ポートフォリオの見直しを進めている」としているだけに、2021年2月期はツヴァイを皮切りに子会社売却が相次ぐ可能性もありそうだ。
ツヴァイは1984年にジャスコ(現イオン)の100%出資子会社として発足。2004年に株式を店頭登録し、ジャスダック上場を経て、2007年に東証二部に上場した。
結婚の希望条件、価値観などの情報を分析し、相性が合うと判断される会員同士を検索し、双方に同時に情報提供する結婚相手紹介サービスを中心に、パーティーやイベントの開催などを手がけてきた。
同業界では近年、婚活パーティー専業やアプリでのマッチングサービスなど廉価なサービスを展開する事業者が増え、同社の新規の入会者は2015年2月期以降、毎年減少していた。
このため従来のデータマッチング中心のサービスから、個々の会員のニーズに合わせて入会から成婚退会までの成婚サポートを行うサービスに舵を切って巻き返しに取り組んでいたが、会員数の減少に歯止めがかからなかった。
このため業績は悪化、2018年2月期から2020年2月期まで3期連続の赤字に陥った。2021年2月期については新型コロナウイルスの影響が見通せないため売上高、営業利益、経常利益、当期利益のすべてを未定としている。
【ツヴァイの業績推移】単位:億円
2016年2月期 | 2017年2月期 | 2018年2月期 | 2019年2月期 | 2020年2月期 | |
売上高 | 38.9 | 37.63 | 36.52 | 35.3 | 30.52 |
営業損益 | 1.46 | 0.5 | △1.93 | △1.78 | △3.33 |
経常損益 | 1.79 | 0.83 | △1.67 | △1.31 | △3.00 |
当期損益 | 0.93 | 0.36 | △2.13 | △1.94 | △4.45 |
一方、ツヴァイを子会社化するIBJは結婚相談所ネットワークを中核事業としており、同社が運営する日本結婚相談所連盟では、全国約2250社のフランチャイズ相談所に加盟する約6万5000人に対してお見合いの機会を提供するなどの活動を行っている。
2018年2月に発表した2022年12月期を最終年とする5カ年の中期経営計画(2018年12月期-2022年12月期)では、婚活事業や周辺領域への戦略的な M&Aで業容を拡大し、最終年に日本結婚相談所連盟の加盟相談所を5000社に増やすとともに、売上高300億円(2017年12月期は94億6100万円)、営業利益 50億円(同14億9300万円)を目指すとしている。
IBJによるツヴァイの買付代金は35億700万円(発表時)で、イオンはツヴァイ株式の64.43%を保有していた。IBJは今後、両社の会員の相互紹介や見込み客の送客などを通じて事業拡大を目指す計画だ。
文:M&A Online編集部
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