【業界動向】寡占が進む調剤薬局。成長率にも顕著な差を示す

 保険調剤薬局は、調剤報酬による収入が8割以上を占めるため、処方箋の処理枚数がほぼ売上に直結する業種といえる。そのため、処方元となる医院との関係が事業のカギとなる。近年では分業率も頭打ちになりつつあり純新規での出店が難しくなってきているため、売上を増やす最も効果的な手法は、M&Aで店舗を拡大する方法である。

 近年、大手企業が資本力を活かした大型買収を成功させているが、彼らは単純な規模拡大だけでなく、明確な差別化を図ろうと模索している。ITを活用して高度なサービスを実現したり、他業種とコラボレーションしたり、新たな価値を創出して中堅以下の企業との差を徐々に広げつつある。

 数字の上でも、上位5社(アインホールディングス、日本調剤、クオール、総合メディカル、メディカルシステムネットワーク)の売上高は平均15%程度の成長を続けているのに対し、6位以下は軒並み10%前後となっており、顕著な差が現れている。

上場調剤大手の調剤関連部門売上高の対前年比率
株式会社ストライク調べ

待ちの経営から攻めの経営へ 大手はITにも積極投資

 例えば、業界トップのアインホールディングス<9627>は、NTTドコモと共同でお薬手帳アプリを開発し、スマートフォンで気軽に処方箋の記録と服薬管理ができるサービスを提供している。メディカルシステムネットワーク<4350>は、日本郵政と提携して在宅医療患者に処方薬を「ゆうパック」で宅配するサービスを開始した。日本調剤<3341>は、お薬手帳アプリに蓄積されたデータやライフログ、さらに民間での活用が検討されている厚生労働省の持つヘルスケアデータなどのビッグデータを活用して、顧客の健康管理および病気の予防につながるデータ主導型のサービス実現を目指している。クオール<3034>はローソンやJR西日本と提携し、コンビニや駅で処方箋を受け付けるサービスを提供。こうした先進的なテクノロジーや異業種と連携したサービスの提供には資本力が必要であり、中小企業が取り入れるのは難しい。

 患者のニーズは処方箋を受け取ることがメインであるため、明確な差別化には至っていないのが現状である。しかし、患者に大きなメリットをもたらすサービス提供が出来るようになるのは時間の問題であり、そうなってしまうと、今までの処方元医院との関係のみで経営をしてきた中小規模の事業者は経営が厳しくなっていくことが予想される。

 中小事業者の中には、独自のネットワークとアイデアを駆使して、調剤報酬以外のサービスを開発し、事業を成長させる道を模索する企業も出てきている。

 広島市を中心に「すずらん薬局」17店舗を展開するホロンは、薬剤師と栄養士が定期的に健康教室を開催し、処方箋のないシーンまで顧客接点を広げ、新規顧客の開拓に取り組んでいる。福岡市を中心に「福神調剤薬局」22店舗を展開するワタナベは、美と健康の相談ができるカフェを調剤薬局に併設したり、漢方茶・スキンケア商品の開発・販売したりすることで、事業の幅を広げようとしている。

今後、大手事業者がさらなるM&Aを実施し市場の寡占化が進み、業界の再編は進んでいく。『待ちの経営』から脱却し、『積極的な経営』が出来ない薬局は淘汰されてしまうことも予想される。

【M&A動向】大手同士の合併や再編が進むなか、調剤薬局のM&Aはさらに活発に

 2016年以降、大手事業者による100店舗前後の同業者を買収する大型M&Aが相次いでいる。業界トップのアインホールディングス<9627>(北海道)は、2016年11月、全国に115店舗を展開する葵調剤(宮城)を買収し、グループの店舗数がついに1,000店舗を突破した。クオール<3034>(東京)も2016年10月に、新潟・山形両県で86店舗を展開する共栄堂(新潟)を買収。総合メディカル<4775>(福岡)も2016年12月26日付で、関東圏や三重、大阪で調剤薬局91店舗を展開する御代の台薬局グループ(東京)10社の株式を取得。これにより全国の薬局店舗数を672に拡大した。

 中堅企業で積極的なM&A攻勢を仕掛けたのは、阪神調剤ホールディングス(兵庫)だ。2017年4月~8月だけでコウセイ(大阪)、アップル薬局(熊本)、レイニア(横浜)ハルファーマシー(大阪)、メディカルかるがも(奈良)、かるがも薬局(大阪)、社環(大分)、至誠堂下山薬局本店(秋田)、ヒカリ薬局(秋田)、ペガサス薬局(宮城)、ナウス(岐阜)を買収し、合計店舗数を一気に430店舗(うち調剤薬局424店舗)に拡大。特に、奈良と大阪で合計60店舗を展開するかるがもグループの買収は、業界で大きな話題となった。これにより阪神調剤ホールディングスは、店舗数でメディカルシステムネットワーク<4350>(北海道)を抜き、業界5位に躍進している。

隣接業種・周辺業務への展開も

 収益基盤拡大のために隣接業種へのM&Aを行う企業も見受けられた。ココカラファイン<3098>(神奈川)は、2017年8月、東海地区を中心に福祉用具のレンタル・販売、住宅改修等を展開する愛安住(三重)の全株式を取得し子会社化した。同社は、福祉用具レンタル・販売、住宅改修事業の経営ノウハウを獲得し、既存介護事業の活性化を図るとともに、ドミナントエリアにおいてドラッグストア・調剤事業と介護周辺事業の連携を図るとしている。

 一方、隣接業界のドラッグストアが調剤薬局を買収し、事業を拡大するケースも今後増えると予想される。その典型例が、2017年8月に発表されたドラッグストア業界3位のツルハホールディングス<3391>(北海道)による杏林堂薬局(静岡)の買収だ。浜松市を中心に77店舗のドラッグストア・調剤薬局を展開し、静岡県ナンバーワンの規模と知名度を誇る杏林堂薬局の買収は、スケールメリットを活かした共同仕入やプライベートブランド商品の共同開発、相互のノウハウ、人材等経営資源の共有など、大きな相乗効果が期待されている。

調剤薬局ラボ 2017年業界動向 を基に再構成しております
まとめ:M&A Online編集部