巽 震二のTOB注目銘柄 ソレキア<9867>に注目

こんにちは、マーケットアナリストの巽 震二(たつみ しんじ)です。今回は、ソレキア<9867>に注目です。

報道の通り、著名な企業家・投資家の佐々木ベジ氏が2017年2月3日にサプライズでソレキアに対するTOBを公表し、これに反対するソレキア現経営陣がホワイトナイトとして緊密取引先の富士通<6702>を擁立し、価格競争が発生しました。本記事を執筆している2017年5月1日時点では両者の提示条件および提示価格の推移は以下の通りです。

図表1 提示条件の概要(2017/5/1現在)


  佐々木ベジ氏 富士通(6702)
提示価格 5,450円 5,000円
買取上限 364,700株 なし
買取下限 なし 446,045株
応募最終日 2017年5月12日 2017年5月10日※

※編集部注:5月8日に富士通はTOB買付期間を5月10日から22日まで延長すると発表

図表2 提示条件の推移

条件公表日 終値 TOB提示価格 対1/31終値プレミアム 対公表日終値プレミアム
    佐々木ベジ氏 富士通(6702) 佐々木ベジ氏 富士通(6702) 佐々木ベジ氏 富士通(6702)
2017/1/31 1,942円           
2017/2/3 2,342円 2,800円 44% 20%
2017/3/17 3,230円 3,500円 80% 8%
2017/3/21 3,565円 3,700円 91% 4%
2017/3/29 3,750円 4,000円 106% 7%
2017/3/31 4,150円 4,500円 132% 8%
2017/4/5 4,820円 5,000円 157% 4%
2017/4/12 5,020円 5,300円 173% 6%
2017/4/21 5,400円 打止宣言
2017/4/25 5,160円 5,450円   181%   6%  

筆者作成

 今回は、1.「初動でこの銘柄に取り組んだ投資家にとってどのような戦略が考えられるか」、2.「今からこの銘柄に新たに取り組む場合に妙味のある戦略はあるか」、の2つのテーマについて考えたいと思います。

1.初動でこの銘柄に取り組んだ投資家にとってどのような戦略が考えられるか

 想定する状況は、TOB以前からの株主又は佐々木ベジ氏が初回の提示価格を引き上げた時にこの銘柄に参入した投資家です。 TOBの条件を整理すると、ポイントとなる制約条件は以下の通りです。

・佐々木氏の提示価格の方が価格が高いが、買付け上限があるため、応募しても売れない可能性がある。しかし、佐々木氏の場合、応募しなくても上場は維持される。
・富士通の場合、買付け下限値を超える応募があればすべて買い取るが、下限値に達しなかった場合は買取をしない。しかし、買付けが成立すればTOB提示価格で2段階買取によるスクィーズアウトがなされる。
・応募締め切りは佐々木ベジ氏の方が二日遅い

 以上の条件から、まずそれぞれの提示条件の期待値を計算してみます。

図表3 佐々木ベジ氏のTOB条件に基づく期待値試算

自己株式控除後発行済株式総数 868,027株 A
富士通派株主株数 108,997株 B
佐々木氏側株式数 58,600株 C
浮動株数 700,430株 D=A-B-C
佐々木氏買取上限 364,700株 E
佐々木氏案約定確率 52% F=E/D
佐々木氏TOB成立確率 100% G
佐々木氏提示額 5,450円 H
佐々木氏案期待値 2,838円 I=H*F*G

筆者作成

図表4 富士通のTOB条件に基づく期待値試算

浮動株数 700,430株A=図表3のD
富士通買取下限 446,045株B
必要応募率 64%C=B/A
TOB成立確率 不確実
富士通期待値 不確実

筆者作成

 佐々木ベジ氏案の場合、全ての確率が事前に確定しているため、期待値を計算でき、現時点の期待値は2,838円となっています。

 一方、富士通の場合、TOBが成立するならば全株式を買い取るので期待値5,000円となるものの、肝心のTOBが成立するかどうかは、浮動株主の64%以上が応募するかどうかに依存しているため、その確率を客観的に算定することはできず不確実性が介在するため、期待値はTOB成立確率の見積次第となります。しかし、いずれにせよその期待値が5,000円を超えることはありません。

  ここで市場株価を参照すると、2017年5月1日終値は5,280円となっています。これは富士通提示額を上回るため、浮動株主の多くはいずれのTOBにも応募せず更なるアップサイドを狙っているのが多数派という状況が見て取れます。

  であるとするならば、エグジットしたい株主は市場株価が5,000円を超えるならばTOBを待たずに市場で売却してしまった方が低リスク高リターンということになります。

  そうすると、既存の投資家にとって、エグジットを望むのであれば、まず5、000円以上での市場売却を試み、売却できなかった分はまず富士通に応募し、TOBが不成立であったときは市場株価と佐々木氏案の期待値2,838円を比較してより高い方で売却するというのが合理的と考えられます。

  このように考えると現状の株価水準は空売りのチャンスでもあるのですが、残念ながらソレキアは貸借銘柄ではないため、空売りは制度信用ではできません。