生き残りのため事業を多角化、FMSへのシフトチェンジを図る

 ビルメンテナンス業は、主にビルを対象として清掃、保守、機器の運転を一括して請け負い、これらのサービスを提供する業と定義されている。経済状況に左右されにくく、安定収益が見込みやすいことから、M&Aにおいて非常に人気が高い業種の1つだ。

 業界全体の傾向を見ると急拡大はしていないものの、2012年以降は拡大が見られる。12年は東日本大震災からの復興需要、13年以降はアベノミクスによる景気改善効果が売り上げを押し上げた要因と推測される。

 しかしながら、今後も市場の右肩上がりが続くとは考えにくい。現在も、都心部ではオフィス需要が旺盛で新規物件が増えているものの、市場全体では多くの物件で空室率が上昇、賃貸料が低下する傾向にあるからだ。人口減少が続く国内状況を考えれば、オフィスや店舗、病院、公共施設などの管理物件が増え続けることは期待できない。市場全体が縮小して、限られたシェアを多くの企業で奪い合う状況に陥ることは避けられないだろう。

 こうした市場傾向を見据え、各社が力を入れているのが「ビルメンテナンス」から「総合ファシリティマネジメントサービス(FMS)」へのシフトチェンジである。総合FMSとは、従来型の施設管理の枠を超えた総合的なサービスを提供することで、施設の効率的利用やコスト削減を図り、入居者(テナント)の満足度を高め、資産価値を向上させるサービスである。各社はFMS事業への転身を目指し、これまで外注していた資材調達や営繕工事などの周辺業務を取り込んだり、入居テナントに対してセキュリティやBPO(ビジネスの間接業務委託)などの付加価値サービスを提供したり、物件内での小売りや飲食などを自ら手掛けるといった経営の多角化に取り組み始めている。

 業界トップのイオンディライト<9787>は、総合FMSへの転身を宣言し、すでに4期連続の売上高増、10期連続の増益という結果を出している。ほかにも東京ガス都市開発がインターネットを通じて空調温度変更や夜間・休日在館申請、作業届の申請、管球交換などを利用できるサービスの提供を始めるなど、各社が総合FMS化に向けた事業拡張に取り組んでいる。