トヨタですら円安の「負の側面」から逃れることができなかっただけに、輸出企業の「円安待望論」に期待していた投資家も動揺している。2日の東証日経平均株価は3営業日ぶりに反落、祝日明けの4日には463円安と大幅続落に終わった。
特に気になるのは本来なら円安ドル高のメリットが大きい北米での減益が大きいことだ。今回の「トヨタショック」で明らかになったのは、輸出産業にとっても円安には「限度」があるということ。トヨタの業績で見れば、昨年の同110円程度が「心地よい円安」であり、同130円を超えると「危険な円安」となることが明らかになった。
現在は政府による為替介入もあり円安も一服しているが、それでも145円と「危険な円安」ゾーンに入ったままだ。このレベルの円安が続けば、2022年度下半期のコスト負担はさらに増加することになる。日本企業は戦後初めて「円安リスク」に向き合った。
自国の通貨を投入して「火消し」ができる円高と違って円安の解消には外貨が必要なだけに、政府や日銀の介入効果は期待できない。トヨタはじめとする輸出産業は、値上げによるコスト吸収を急ぐ必要がある。円安局面でもあり、海外の値上げは円安効果で大きな問題にはならないかもしれない。
難しいのは国内向けの製品値上げだ。トヨタは2022年9月に「ハリアー」の一部改良で、10万8000円から13万8000円の値上げに踏み切った。今後も他車種でも値上げが続くと見られるが、日本の平均賃金はそれほど上昇しておらず国内販売には悪影響が懸念される。
しかも、電気自動車(EV)で中国車や韓国車の日本上陸も本格化する見通しで、日本車の値上げを機に輸入EVにシェアを奪われる可能性もある。少し前までは考えられなかったことだが、円安がわが国製造業の大ピンチを招くリスクは増していると言えそうだ。
文:M&A Online編集部
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